A&D カセットデッキ GX-R3500の修理 2009.2.8

    GX-R3500
    GXヘッド搭載のリバースデッキ

     性懲りもなくまたカセットデッキをヤフオクで入手した。シングルウェイデッキを既に何台か手に入れたので、 目先を変えてリバースデッキにした。

     リバースデッキといえば、SONYのTC-RX715 を先に入手しているのだが、もう一台比較用として、別メーカーのものを手に入れてみても面白いかなと思った次第。

     そんな中、赤外線センサーでテープエンドを検出して、わずか0.3秒で走行方向を切り替えるというA&D(AKAI) のGX-Rシリーズに目をつけた。dbxを搭載した機種もあるとの情報に、俄然面白くなり、オークション出品をチェックする。

     出品価格100円で誰も入札しないGX-R3500があり、終了間際に入札して100円で落札した。 事前にGX-R3500は、dbxの搭載なし、コストダウンで内部はスカスカの決して価値のあるものではないと 判っていたが、取扱説明書、リモコン付きで100円の魅力に負けて買ってしまった。

     まぁ、見た目の面構えは、AKAIのデッキだけに先に修理したGX-73 などと変らぬ姿で、GX-73と並べて おけばよかろうと納得する。同一メーカーのシングルウェイとリバースを並べて比較するのも一興だ。

     このデッキ、もちろんジャンク品だ。出品案内では、テープ走行方向が、ノーマル・リバース交互に ばたつき、再生・録音も出来ないとあった。期待の赤外線センサーがいかれているとちょっと残念だが、 たぶんゴムベルトあたりの劣化だろうとあたりをつける。

    背面はシンプルだ
    CD-DIRECT入力がある
    正真正銘のGX-R3500

     届いたデッキは、大事に保存されていたようで、薄く埃が被っただけの良品であった。テープをセットして 動作確認を行ってみるとテープが廻らない。よく調べて見ると、キャプスタンが全然廻っていない。 どうやらメインのキャプスタンベルトが劣化しているようだ。


     添付されてきた取扱説明書によると、このデッキ、自動録音レベル調整の機能が搭載してあり、録音ボリューム が内臓されたモーターで勝手に動くらしい。SONYのTC-RX715にもこの機能があった。

     ONKYOのミニコンポでもモーター付きのボリュームを採用しており、リモコンで音量操作をすると、ボリュームが 自動で動く。これが見ていて面白い。こういうギミックを見ると嬉しくなってしまう。

       早速に、録音モードにしておいて、付属のリモコンで録音レベルの調整を試みたのだがボリュームが動かない。 試しにリモコンのその他のボタンを押してみたが、一向にデッキが反応しない。

     そこで、デジカメでリモコンの出力を確認してみると全く発光していない。リモコン不良だ。 こちらも分解・整備が必要なようだ。

    GX-R3500のリモコン(左)とTD-V505のリモコン(右)、形状が同じなので、同一メーカーからのOEMかもしれない GX-R3500のリモコンは発光していない TD-V505のリモコンは正常に発光している

     ついでに、デジカメで、ヘッド付近にあるテープエンドを検出するという赤外線センサーが発光しているか 確認してみたが、発光しているのかいないのかよく判らなかった。

     清掃、といっても拭くだけで済みそうだが、に取り掛かる前にケースカバーを開けて中を覗いて見ることにした。 ジャンク修理で、一番ワクワクする瞬間だ。

     このデッキ、GX-73と違ってケースカバーに放熱口が設けられていないので中は至って綺麗だ。埃は全然ない。大きな基板が一枚と カセットメカだけのシンプルな構成でスカスカ状態だ。SONYのTC-RX715や VictorのTD-V505と同様だ。録音ボリュームを廻す モーターは、基板に取り付けてあった。

     年代が新しくなると、マイコンへの機能依存が高くなり部品点数が少なくなる。さらにICなどの集積度があがるので、どうしても ケースの中はスカスカとなる。

    基板が一枚とカセットメカだけのシンプルな構成 リバースのカセットメカ 録音ボリュームを回転させるモーター
    ヘッド接続ケーブル

     さて、カセットメカを一目見て不具合原因が判った。劣化して伸びたメインベルトがキャプスタンのフライホィール から外れ、モーター部分に巻き付いてしまっていた。

     カセットメカを取り外し自作のゴムベルトと交換する。テープの巻き取りには、ギヤ機構が使われていた。これなら劣化する 心配はない。ついでに、テープセレクタの接点を清掃しておく。

     メカを取り付け戻して、簡単な動作確認を行ってみる。キャプスタンが正常に回転しテープが走行しだした。 ヘッドフォンからも正常に音が出た。リバース動作も問題ない。

     この後、ボリュームつまみや操作ボタンに付いた埃や汚れを拭い取り、前面パネルもアルコールで拭いて修理は完了とした。

    メカ取り外しの為に前面パネルを外す
    取り外したカセットメカ
     回転センサーは右リール側にあった。
     巻き取りは振り子のギヤ機構。
    リバースヘッドは回転式
     GXヘッドが輝いている
     録音ギャップと再生ギャップの2つのギャップが一つのヘッドに組み込まれている。(ツインフィールド録再ヘッドと呼ぶらしい)
    メインベルトを自作品に交換
     自作ベルトは1mm厚とちょっと厚いが問題なし

    ■試聴と動作確認

     このデッキでCDから録音を行ってみた。録音レベルの自動調整機能は正常に動作した。録音開始時点で約20秒間CDの再生音をマイコンが モニターして最適な録音レベルになるよう、モーターを制御して録音ボリュームを適正な位置にセットしてくれる。

     録音ボリュームが最小の位置から、時計回りに回転して行き、目盛りが5.5の位置で停止した。CDの最大音量の部分をこの20秒間 で再生してやるのが、最適レベル調整のコツらしい。

     このデッキは、録音BIASを微調整できるが、こちらは操作が面倒だ。録音と再生は一つのヘッドに別のギャップで構成されているが、 通常の3ヘッド機のように、録音時にテープを同時再生させることは出来ない。少し録音してテープを巻き戻して再生にて効果を確認し、 駄目なら再度これを繰り返すという面倒なことをしなければならない。今回の試聴では、BIASは触らずにおいた。

     さて、録音後の再生音確認の感想だが、このデッキ、何も味付けのない素直な音と感じた。低音、高音ともに強調されることが無い。 ただ、デッキの出力音量が他のデッキに比べ少し小さいような気がする。そのままでは、音量が小さくメリハリが無いので、ちょっと つまらぬデッキに思えてしまう。ところが少しアンプの音量を上げてやると、中域から高域によく伸びた音が聞こえてくる。低音はやや弱め の感がしないでもない。

     このデッキは、録音レベル自動調整の他に、テープエンドで録音を絞るフェードアウト機能がついているのだが、こちらはテストして 見ると、フェードアウトのタイミングでゆっくりとレベルが下がらず一気に下がってしまった。回路不良か、それともテスト方法が間違っ ているのか。また暇な時にでも調べてみたい。