ONKYO MD/CDミニコンポ FR-V3の修理 2006.01.22

     ジャンク品です。ヤフオクにて680円で落札。
     FR-V3は、MD/CD/TUNER、一体型のミニコンポで、ONKYO製品の低価格帯に位置する製品です。FR-V3は90年代末の製造だと思いますので結構古いものです。

     ONKYOの製品を手にするのは、私にとってはこれが初めてです。

     オークション出品時の案内書きは次のとおりでした。

     電源が入り、CD,MDともに音とびしながらも再生できることは確認しています。CDトレイの出し入れは問題ありません。FMチューナも受信確認できました。
     当方にて音量調節のボリュームを交換しています。このため、右側の音声がでません。また目盛りの位置が−90度ずれています。したがってジャンク扱いでよろしくお願いします。部品取りなどにいかがでしょうか?
     本体のみです。リモコン、取説など付属品はありません。

     早速に外観からチェックを始めました。全体的に綺麗です。中古品としての見かけは上の部類です。操作スィッチにも特に異常は無さそうです。このコンポはミニコンポながら入力ソースは豊富です。MD/CD/TUNERの内臓音源に加えて外部音源として、LINE-1、LINE-2、TAPE、DIGITALの7音源が選択できます。再生方法にも一工夫が有りCD-MD-CD...とCDからMD、MDからCDと連続して演奏することができるようです。


     赤字で示した位置にずれている

     さて、問題のボリュームです。確かにボリュームの回転位置が90度ずれています。出品者にメールで確認した所、このコンポは部品(ボリューム)取りとして入手、このコンポのボリュームは別の機器に流用し、流用先の機器から外した壊れたボリュームをこのコンポに取り付けた、ということでした。

     分解を始める前に、スピーカーの代わりにイヤフォンを繋いで簡単な動作確認をしました。FM受信、CD再生、MD再生ともに音が出ることを確認しました。ただし、左側の音が全ての場合において聴こえません。ボリューム不良は、右側ではなく左側のようです。

     CDの再生ですが、CD-Rは再生音にノイズが乗るような感じです。市販のCDでは特に問題はありませんでした。MDは問題無く再生出来ました。曲の頭だけを聴いて次の曲、次の曲へと手早く選曲してもピックアップは問題なく追従してきます。

     ざっとチェックした範囲での診断結果は、
     ・音量調節ボリュームの左側不良
     ・ボリュームつまみの回転位置不良
     ・CDプレーヤのCD-R再生不具合
     ・MDの再生は問題なし、録音は未確認(多分OK?)
    です。

     ボリュームについては、新品交換するか、ボリューム自体を分解して不良個所を修理するしかありません。現物修理の場合は、ボリュームつまみの回転位置も修正する必要があります。

     ケースを空けて中を見てみました。MD/CD/TUNER/AMPがこのサイズに詰め込まれているために複雑です。問題のボリュームやCDプレーヤへのアクセスが容易かどうか、分解手順はどうするか、など考えながらよく眺めて見ます。

     毎度の事ながら、一体型ミニコンポの場合には、その分解手順を考えるのは、パズルを解くようなものです。小さな空間にたくさんの部品が効率よく詰め込まれています。メーカーの工夫の結果です。それを読み取りながら分解手順を考えることも楽しみの一つです。

     ミニコンポでは、空間が狭いために、仮組み状態で動作テストをするのは困難です。分解、組立は一回だけで済むように、故障個所、修理個所を最初に良く見極めておく必要があります。ざっと眺めて見た限りでは、MD/CDのメカユニットには、カバーがかかっており、ピックアップにアクセスするのはそう容易ではなさそうです。出来ればMDメカには手を入れたくありません。もう一度、現状の動作確認をきちんと行う必要がありそうです。MDで音飛びがあればピックアップの清掃は必ず必要です。もう一度念入りな音出し、録音確認テストを行うことにしました。

     先に修理したDENONのCDレシーバー・アンプのデジタル出力をこのコンポの背面のDIGITAL入力に光ケーブルで接続し、MDへの録音テストを行いました。録音したMDをKENWOODのDM-SG7で再生するとともにこのコンポのMDレコーダーでも再生してみました。結果はどちらも良好です。MDレコーダーは録音・再生ともに問題ないことがわかりました。MDメカには手を入れる必要はありません。下手に触って壊してしまっては元も子もありません。

    ボリュームの修理

     ONKYOのサービスセンターにFR-V3のボリュームが今でも入手可能か問い合わせて見ました。入手は可能でしたが価格が1,900円と本体の入手価格の3倍もしますので新品は諦めて、まずは現物修理に挑戦することにしました。このボリュームはモーターが一体となっていますので高価格のようです。

     ボリュームつまみを外しアルミパネルを取り外します。  アルミパネルを外したサブパネルも取り外します。  ボリュームが、基板に取り付けてあるのが分かります。
     ボリュームの後ろにはモーターが見えます。ボリュームとモーターは一体となっています。  うまい具合に基板を外さなくてもこのままの状態でボリュームは外せそうです。ハンダ鏝を当てるのに邪魔になるものはありません。  ボリュームを取り外した後の様子です。
     これが、モータードライブのボリュームです。  ボリュームを分解して見ました。折り曲げてある爪を起こしただけで簡単に分解できました。  これが、ボリュームの本体部分です。カーボン膜が塗布された部分が抵抗となり、2回路のボリュームを構成しています。3番ピンから6番・7番ピンに繋がる黒い環状のパターンが抵抗部分です。

     調べて見ると環状のパターンの一部でクラックがありました。断線状態にまでは至ってませんが、数百キロオームの抵抗値がありました。もう一方のパターンの抵抗は60キロオームでした。不具合状況を回路で書くと次のようになります。

     さて修理ですが、クラックの部分に鉛筆をこすり付けただけでうまく繋がってくれました。数百キロオームあった抵抗値が58キロオームになりました。いとも簡単に直ってしまいちょっと拍子抜けでした。

     つまみの位置が90度ずれるのは、ボリュームの軸の切り込みが、つまみの切り込みと合っていないからです。FR-V3のものと違うボリュームが付いているのだからどうしようもありません。つまみ側の切り込みを変更するしか方法がありません。色々思案しましたが、我が家のジャンク箱からぴったりなつまみが見つかりました。このつまみの上に、今あるつまみを被せてやれば良いわけです。

     プラスティックなので加工は簡単です。うまく出来上がりました。


    CDメカ部の清掃

     CDプレーヤーの音飛びやCD-R再生時のノイズを解消するために、ピックアップの状況確認と清掃を行うことにしました。

     チューナー基板、MDメカ、バックパネルを取り外し、CDプレーヤーを覆っているカバーを取り外すとピックアップに手が届きます。この分解作業に取り掛かる前に、CDプレーヤーのトレイはオープン状態にしておきます。レンズがやや曇っているように見えます。ルーペで見て見ると埃も被っているようです。取り合えずはレンズの清掃を行っておきました。



    PLAYボタンの修正

     CDのレンズ清掃を終え、分解した基板を組み立て直し、CDの再生テストを行っている時です、奇妙な現象が発生しました。PLAY/PAUSEボタンを押した時に再生モードが変わります。もう一度ボタンを押すとCDの再生が始まったり、止まったりしますが、PLAY/PAUSEの操作をする度に、時々、再生モードの変更やEDITモードになったりします。

     どうやら、PLAY/PAUSEボタンの接触不良が起こっているようです。ミニコンポの操作パネルのボタンの検出は、コンピューターのキーボードのようなマトリックススィッチによる検出では無く、抵抗値の変化で行っているものが多いのですが、このコンポもそのようです。下記回路図は模式的に表したものですが、PLAYボタンの接点が不良で接触抵抗があると、他のボタンを押した時に近い抵抗値になり、マイコンが誤検出します。

     マイクロスィッチを分解するわけにも行かず、ボタンを押しながらグリグリして接触面を清掃してやると誤検出は無くなりました。

     CDの再生については、うまく再生できるようになりました。CD-Rを再生しても問題ありません。市販のCDも勿論問題ありません。

     これで、このミニコンポの修理は完了です。しかし、今回の修理内容はどことなく不安の残るものです。暫く使って見て様子を見ようと思います。