TRIO プリメインアンプ KA-7500 の修理 2014.11.12

    ■ジャンクのKA-7500

     ハードオフでジャンクのプリメインアンプ、TRIOの「KA-7500」を見つけました。商品札には、こんな説明書きがありました。「電源は入りましたが、音が出ません。」

     背面を見てみると、スピーカー端子が金メッキのバナナプラグ対応のものに取り替えられていました。Bスピーカー用の端子がありません。Aスピーカーのみとなります。更に、シャシー上面の通風孔から中を透かして見ると基板上の電解コンデンサが新しいものに交換されているように見えます。  値段は、税込み4,860円。音が出ないにしては高いような気もしますが修理で暫く遊べるのではないかと思い購入しました。

    ジャンクの「KA−7500」、大きな傷や汚れも無く良品に見えますが....
    パワーメーターがあると賑やかです。
    スピーカー端子が交換されています。
    Aスピーカーのみ使用できます。


    ■KA-7500の故障箇所調査

     自宅に持ち帰り早速に動作確認を行ってみました。電源スィッチを入れると、電源インジケータの赤のLEDとメーターの照明ランプが点灯しました。

     一度電源を切り、背面のAUX入力端子にPCからのオーディオ出力を、スピーカー端子にテスト用のスピーカーを繋いでからもう一度電源を入れます。入力切替でAUXを選択しボリュームを少しずつ回して見ますが、メーターは振れず音も出ません。商品説明に間違いはないようです。

     もう一度確認して見ると、電源を入れた後、数秒後にカチッというスピーカー保護リレーが動作する音が聴こえてきません。リレーが動いていないのですからスピーカーから音が出るはずがありません。

     このアンプは、プリアンプ出力とメインアンプ入力を背面のスィッチで分離できます。プリアンプ出力をミニコンポのLINE入力に接続して見ましたら、ミニコンポからは正常に音がでました。ボリュームも左右のバランスもトーンコントロールもちゃんと動作しています。プリアンプ回路は問題ありません。

     メインアンプの故障か、もしくはスピーカー保護リレーの駆動回路の故障のようです。リレーの駆動回路の故障であることを祈りつつシャシーを開けてざっと中を覗いてみます。


    アンプの蓋を開けてみました。予想したとおり基板上の電解コンデンサが交換されていました。
    感心なことにラッピング配線を外さずにうまく交換されています。プロの仕業でしょうか?
    大きな電源トランスと2本の大きな電解コンデンサです。これで100Wを出力します。
    電解コンデンサは、15,000uFと大容量です。


    トーンコントロール基板のようです。
    左チャネルのメインアンプ基板です。「KA-7300」と似たような基板です。 こちらは右チャネルのメインアンプ基板です。


    スピーカー保護リレーです。別物に交換されています。ここが故障ならラッキーですが... スピーカー端子部分です。Aスピーカーの左と右です。Bスピーカーへの配線はどうなっているのでしょうか? もう一度左のメインアンプ部分です。Bスピーカーへの配線は途中で切られています。黒い収縮チューブが被さっているケーブルです。


    音量調整用のメインボリュームと左右のバランスボリュームです。高級感がありますが中身はどうなんでしょうか。 出力メーター基板です。100Wと3Wのレンジ切り替えのスィッチがあります。 スピーカー切り替えスィッチです。スピーカー切り替え時には、メインアンプ入力に100KΩの抵抗が挿入されるようになっています。

     2014.11.16
     スピーカー端子の交換や電解コンデンサの交換は、大阪の修理業者さんの手によるものであることが判りました。今年の2月にメンテナンスされています。
    オーディオステレオ修理工房 テクニカルオーディオこのページKA-7500の修理概要があります。

     このアンプの元の所有者さんは、音が出ない修理をもう一度この修理業者さんに依頼されなかったんでしょうか。愛着があってわざわざメンテナンスに出されたと思いますのでもう一度修理に出されるのが人情と思うんですが。ひょっとして、手がかかり過ぎることに嫌気がさしてハードオフに投売りでもされたのかも知れません。


    ■左のメインアンプ不良

     スピーカー保護リレーは、メインアンプの出力が異常になった時には、直ちにスピーカーを切り離すようになっています。この保護動作がずっと働いているのかも知れません。そこで電源投入直後のメインアンプの出力電圧を測定してみました。

     右の出力は、+25mVで、左の出力は、なんと-29.8Vでした。これでは、保護回路が働きリレーは動作しません。このアンプでは、先の写真で見たように左右のメイン基板は分離されています。左のアンプ基板への電源ケーブルを取り外してみました。これで不具合原因は取り除かれ、リレーは動作し右側から音がでるはずです。

     動作確認を行って見ると案の定、リレーの動作するカチッという音がし、右からは期待どおりに音がでました。メーターもちゃんと振れています。ボリュームを上げると音も大きくなります。

     ここまでの調査で左のメインアンプ不良が特定できました。それでは、左のメインアンプのどこが悪いのでしょうか、次なる調査を進めます。

    左のメインアンプへの電源ケーブルを取り外してみます。赤が+50V、白が-50Vです。 リレーが動作し右側から音が出ました。メータも振れています。


    ■アンプモジュールの分解

     アンプユニットをシャーシーから取り外し、回路図を元にアンプモジュールを調べてみました。結果、プッシュプルのマイナス側のダーリントンの出力トランジスタが故障していました。各端子間が導通状態になっています。またエミッタ抵抗の0.4Ωも焼けて断線していました。


    左のメインアンプユニットをシャーシーから取り外しました。 回路図でトランジスタモジュール「TA-100W」の端子を調べます。 「TA-100W」を切り離してテスターで調べてみると、6番(-50V電源入力)と5番(アンプ出力)の間が176Ωでした。ここは導通がないのが正常です。ちなみに、2番(+50V電源入力)と5番は導通がありません。


    金属のカバーをドライバーでこじ開けて行きます。 周囲をうまくこじ開けることができました。さて中はどんなになっているのでしょうか。 トランジスタ素子などが組み込まれています。


    不正確ですが参考になる回路図をネットで見つけました。
    回路図を参考に調べた結果です。
    マイナス側のダーリントンの出力トランジスタが導通状態になっていました。


    ■取り合えずプリアンプあるいはモノラルアンプとして活用

     ディスクリートのトランジスタを使ったアンプ回路であれば、壊れたトランジスタを交換すればいいのですが、今回はモジュールの不良です。トリオ専用に設計されたモジュールで代替品もありません。ジャンクのKA-7500やKA-7300からアンプユニットを取り外して組み込む手もありますが、それではもう一つ不良品を作ることになります。

     幸いにメインアンプのドライバー基板は正常です。ディスクリートのトランジスタを使ってこのトランジスタモジュールと同等の機能を持つ回路を製作できれば復活させることができます。

     取り合えず、回路が出来上がるまではプリアンプもしくはモノラルアンプとして活用したいと思います。

    左のメインアンプ回路はモジュールの製作のために取り外したままにしておきます。 右の出力(青線)と左の出力(黄線)を黄色のケーブルでジャンパー接続しました。これで右の音が左からも出ます。
    この状態でシャーシーの蓋を閉じました。


    モードスィッチでモノラルにしておきます。 モノラルアンプとして左右から同じ音が出ています。メーターも同じように振れています。


     右のアンプ出力を左側にも接続し、動作モードをモノラルに設定して動かしてみました。左右のメータが仲良く振れて見た目は正常なアンプに見えます。この後、ツマミやノブ、パネルを清掃しておきました。

     今回は修理完了にまでは至りませんでしたが、同等の回路の組み込みに成功したら追レポートしてみたいと思います。