ONKYO MD/CDミニコンポ FR-V5の修理 2008.01.20

     ジャンク品です。ヤフオクにて1,500円で落札。
     FR-V5は、以前に修理したONKYOのMD/CD/TUNER一体型のミニコンポFR-V3のシリーズ機です。見た目の概観は全く同じです。

     ONKYOの製品を手にするのは、これで2台目ということになります。

     オークション出品時の案内書きは次のとおりでした。

    ・リモコンなし
    ・電源入りMDの再生、AMチューナーの動作確認しましたが、FMチューナー受信せず、CDトレー開きません。MD録音のチェックしてません。
    ・外観は汚れキズ多々あります。
    ・あとは写真でご判断下さい。
    ・内部の状態までは分かりません。
    ・ジャンクです。部品取り等にお使い下さい。
    ・保証は一切出来ません。ご注意下さい。

     早速に外観からチェックを始めました。案内書きのとおり小さなキズや汚れがありましたが全体的に綺麗です。主観になりますが気になる程のものではありません。操作スィッチは特に異常は無さそうです。このコンポもFR-V3同様に入力ソースは豊富です。MD/CD/TUNERの内臓音源に加えて外部音源として、LINE-1、LINE-2、TAPE、DIGITALの7音源が選択できます。

     次に動作確認を行いました。案内書きによるとMDの再生は問題無いとのことでしたので、手持ちのMDで再生テストを行いました。問題なく再生します。選曲、飛び越し操作も良好です。この後、PCのオーディオ出力をLINE-1、LINE_2、TAPEと順次接続して、それぞれ音が出るか確認しました。これも良好でした。

     次にKENWOODのCDプレーヤーDP-SG7のDIGITAL出力を光ケーブルで本機のDIGITAL入力に接続しMDへの録音テストを行いました。数曲程録音した後、本機とKENWOODのMDプレーヤーDM-SG7で再生確認をしましたが問題無く録音出来ていました。

     チューナーですが、AMは確かに問題無く受信出来ました。FMですが、案内書きに反してこちらも受信出来ました。ただし、チューニング表示が少しずれています。KISS-FMの89.9MHzが89.75MHzあるいは89.8MHzの表示で受信します。NHK-FM神戸の86.5MHzも同様に86.35MHzから86.4MHzのチューニング表示で受信しました。表示がずれてはいますが綺麗に受信出来ていますので問題無いものとしておきます。同調回路のトリマーの調整で直すことが出来るかもしれませんが、高周波回路の調整治具を持っていませんので今回はこのままにしておきます。

     最後にCDの動作確認です。確かにトレーが開きません。イジェクトボタンを何回も押していると10数回に一度開くことがあります。この時にCDを入れてやると開閉動作は問題ありません。CDを入れていないとトレーが開閉しません。なお、CDを入れた時にCDを認識するかと思いましたが、「No Disk」と表示するだけで認識しません。トレーの開閉問題は、この機種というかONKYOのこの時期のCDプレーヤーの特徴でゴムベルトのヘタリと思われます。

     以上の調査を元に分解に取り掛かります。FR-V3と概観は同じですが、果たして中の内部構造はどうなんでしょうか。期待を持ってカバーのビスを緩めにかかります。この時、ドライバーの力加減で一度このケースが開けられたことがあるような感じがしました。カバーを外して見ると残念ながらFR-V3と全く同じ構造の物が出てきました。

    前面の化粧カバーを外す
    MDユニットと電源回路
    後部にチューナー
    CDユニットは下部にある

     内部の鉄製の部分に軽い錆びが浮き出ている割には埃も無く綺麗なことや、配線の結束バンドが無くなっていること、回路基盤を留めているプラスティックの爪が折れていることから、懸念したとおり一度開けられたことは確実です。メーカー修理で開けたものか、私のように素人修理で開けたものか、多分後者のような気がします。メーカー修理なら結束バンドが無くなることは無いように思います。

     一体型ミニコンポの場合には、その分解手順を考えるのは、パズルを解くようなものですが、FR-V3の修理経験で内部構造が良く判っていますので、手際良く分解していきます。CDのプレーヤー部にアクセス出来る所まで分解します。CDトレーの開閉機構を良く観察して見ます。トレーが閉じる時、ゴムベルトによりモーターの回転が歯車を通じて、トレーを中に取り込みますが、トレーが奥まで納まり切った後も、歯車は回転して、ピックアップ部分を下から上にせり上げます。トレーが開く時はこの逆で、まず最初に歯車の回転によりピックアップ部分を下に落としてから、次にトレーを前に押し出します。

    操作パネルとMDユニット
    電源回路とメイン回路
    電源トランスとCDユニット

     さて、本機の不具合症状ですが、ゴムベルトのヘタリによりピックアップ部分のせり上げが出来ていないようです。ピックアップのせり上げにはトレーの開閉よりも大きなトルクを必要とします。ゴムベルトがヘタるとトルクが抵抗となってモーターが空回りしトレー開閉用の歯車は、中途半端な位置で回転停止します。この状態になるとトレー側に刻まれたギアと歯車との噛み合わせ位置がずれた状態になり、この後歯車が回ってもトレーが動かない状況となります。何かの拍子にギアが少しでも噛み合うとトレーが開閉します。

     交換用のゴムベルトですが、純正品が手元にあれば良いのですがそんなものはありません。メーカーのサービスに注文するのも面倒です。オーディオの修理では、ゴムベルトの交換は機会も多く必須となりますので、いつも、ゴムシートから円形カッターで切り出した代用品で済ませています。今回も適当にゴムシートから切り出して交換しました。輪ゴムは、カーボンが含まれていないので修理には向きません。一時的な代用には使えますが恒久的な修理には、カーボンを含んだ黒いゴムシートが適当です。

    CDユニットの問題のベルト
    ゴムシートからベルトを作る
    レンズ部分は綺麗だが...

     ピックアップのレンズ部分は、清掃してあったようで綺麗でした。埃も何もありませんでした。取り合えずゴムベルトの交換だけして、元通りに組み立て直し、動作確認を行いました。トレーの開閉はスムーズです。問題ありません。次にCDを入れて見ました。あわよくばの期待もむなしくCDを全然認識しません。ピックアップのレーザー出力が低下しているかレーザー発光していないかどちらかだと思われます。ジャンク品なので、CDが聴けないのは諦めることにして、ここまでで修理を一旦終わることにしました。

     しかしながら、ピックアップには出力調整用のボリュームが付いていましたので、完全に諦める前に、レーザー出力調整をやって見ようと思い立ちました。ただ、出力調整となるとCDプレーヤー部分を動かせる状態にしないと不可能です。先ほどのように完全に分解すると通電が出来ず調整が不可能になります。カバーをもう一度空けてみて通電状態を確保しながらCDプレーヤー部分にアクセス出来る方法を考えてみました。

     前面の操作パネルを一旦取り外します。ヘッドフォンケーブルは外したまましておきます。操作信号のフラットケーブルは、パネルを横向きにした状態で再度接続します。CDプレーヤーのユニットの上には、MDのユニットと電源回路基盤が搭載されています。CDの調整中にはMDは不要ですのでMDユニットを外します。MDのオーディオ信号線は基盤に接続したままにしておきました。次に電源回路基盤も一旦取り外します。この状態でCDプレーヤー全体を覆っている黒いプラスティックカバーを取り外します。このプラスティックカバーを取り外すのは、本来やっかいな工程ですが、カバーについている基盤を固定する爪が既に折れていましたので楽に外すことが出来ました。これでピックアップ部分にアクセス出来る状態になりました。次にビニール袋で、MDユニットと電源回路基盤をカバーして、通電中不用意にショートさせてしまわないようにしました。以上で、通電しながらの動作確認が安全に出来るようになりました。

    操作パネルを横置きで接続
    MDユニットと電源回路をカバー
    ユニットカバーを外す
    これでピックアップの確認が出来る

     ピックアップのレンズ部分を良く見ているとCDトレーの開閉操作の度に、微かな赤いレーザー光が発せられているのが確認できました。レーザー発光はしているようですがあまりにも弱々しい光です。ピックアップ部分のボリュームを左右に適当に回して様子を見ますが変化はほとんどありません。やはりレーザーダイオードの寿命のようです。完全修理にはピックアップの交換が必要なようです。よく見るとピックアップの型番はKSS-213Cでした。実はこのKSS-213CはSONYの製品でKENWOODのDP-SE7やDP-SG7で使われているものと同じ物です。手元にはDP-SG7の修理用としてつい最近入手したものが一つあります。DP-SG7の修理用には後日買い足すことにして、ピックアップの交換を行うことにしました。ピックアップの交換作業自体は特に難しいものではありませんでした。ピックアップの基盤にあるショートランドを開放するためだけに半田ごてを引っ張り出してくるのが面倒でした。

    ピックアップユニットを取り外す
    ピックアップを取り外す
    右が新品のピックアップ

     ピックアップ交換後の動作確認ですがCDを問題無く認識するようになりました。ピックアップが新品ですからCD-Rも問題無く読み取ります。元通りに組み立て直し、エージングを兼ねてCDを連続演奏しました。時折音飛びします。フォーカスずれのような感じです。ピックアップの動きがまだ馴染めていないのかも知れません。何時間かCDを連続演奏している内に、音飛びは無くなりました。MDへのCD丸ごと録音も試して見ましたが、MDには音飛びも無く綺麗に録音されていました。

     これで、FR-V5の修理は完了です。FM受信の表示ずれ以外は完全なものとなりました。さらにエージングを行い、調子を見てから使い道を模索してみたいと思っています。