DENON 3連装MDデッキ DMA-M10Eの修理(その2) 2008.08.08


    電源を入れるとMech Errorと表示される
     ジャンク品のMDチェンジャーをヤフーオークションにて入手した。商品説明には、
      液晶画面にMech Errorと表示されてディスクが入らない。
      ダメ元で修理に挑戦したが、難しそうで途中で断念した。
      中でモーターが空回りしている音がする。修理前にはしていなかった。部品余りは無い。
      使用頻度が少なく修理に自信がある方には良いものと思う。
    のようなことが書かれていた。

     「DMA-M10E」は、以前にも1台ジャンク品を入手したことがある。メカトロの塊であるMDチェンジャーの修理に挑戦してみようと入手した訳だが、期待に違わず入手したものはジャンク品ではなく全くの正常品であった。

     困難が予想される修理を楽しもうと意気込んでいただけに、ちょっと肩透かしを喰ったようで面白くなかったが、カバーを開け、チェンジャーユニットの余りにも複雑そうな作りを見た時には、反面、修理する必要がなくて良かったと思ったことも事実。それ程に修理の困難さを思わせるチェンジャーユニットであった。このチェンジャーは、今でもずっと使用しているが、不具合が発生したことも無くすこぶる調子が良い。

     修理で遊べそうなジャンク品をヤフーオークションで漁っていた時、今回の出品が目にとまり、あの時に出来なかったMDチェンジャーの修理に再度挑戦して見ようと思った次第。商品説明の文言も、当方のやる気を大いに奮起させるものであった。

    ■分解・修理

     商品が自宅に届き、早速にテストを開始。電源プラグをコンセントに差し込み、操作パネルの電源ボタンを押すと、いきなり「TOC Reading」と表示された。暫く眺めていると、中でモーターが廻る音がし、「Mech Error」と表示された。電源ボタンを押して見るが電源が切れない。電源プラグを一度抜き差しして再度電源を入れて見る。いきなり「MechError」と表示した。

     ディスプレーをよく見ると、左側に表示されるはずの1〜3までのスタッカーのマークが表示されていない。正常品は、ここにスタッカーの状態が表示される。試しにMDを挿入して見たが、表示が出ることは無い。

     こんな状況だから、なんのためらいも無く修理に挑戦できそうだ。嬉しさで思わず顔がほころぶ。

     早速にケースカバーを開ける。出品者が一度修理に挑戦しているだけに中は埃も無く綺麗だ。前回の修理で見知ったものだけに手際良く分解を進める。

     チェンジャーユニットの前方にあるスタッカー辺りから、後面の制御基板に伸びているフラットケーブルを外して驚いた。フラットケーブルの端末に接着してある薄い青のビニール板の補強材が剥がれており、7本ある芯線部分がバラバラで、 一部の芯線に至っては折れ曲がっていた。これでは、コネクタにケーブルがきちんと納まっていなかったはずだ。取り合えず、芯線を真っ直ぐに伸ばし、補強板を瞬間接着剤で接着しておいた。

     このケーブルは、スタッカーに取り付けられたセンサーの出力を制御基板に伝えているもので、ここが不良でディスプレーにスタッカーの状態が表示されていなかったように思われる。最終的には、このフラットケーブルの端末部分をきちんと修理して、このMDチェンジャーの「MechError」は直るのだが、実は、それ以外にも大いに疑わしき点が見つかり、いい加減なフラットケーブルの端末処理と相まって、その解決に2〜3日の時間を費やしてしまった。

     チェンジャーユニットをシャシーから取り外した段階で、手に持って、前後左右、上下の各方向から仔細に眺めていた時、何か部品が中で転がるような音がした。良く見てみると、小さな金属部品が一つ、ユニットの中から見つかった。大きさ、形状からして、チェンジャーユニット内部に収めてあるMDユニットの何かの部品と思われる。この部品の取り付け位置を見つけるべく更に分解を進めていった。

     MDユニットのメカもバラバラに分解し、外れた部品の取り付け場所を探して見たが、全然見つからない。部品がピタリと納まる場所が見つからないのだ。商品説明にあった「部品余りは無い」が頭にひっかかるが、部品の取り付け場所の特定は、もう諦めて、一度組み戻して見ることにした。

     組立直してテストするも、何も症状は改善しない。やはり、あの部品をきちんとどこかに取り付けないとダメなんだろうか。その後、もう一度分解し調べて見るが、部品の取り付け場所は、やはり見つけられない。ことここに至り、果たしてこの部品は本当に必要な部品なのだろうかと疑いを持つ。

     こうなると、正常品との比較しか無い。もう一台の正常な「DMA-M10E」を分解し、ユニット部品を比較することにした。正常品のカバーを開けた段階で、チェンジャーユニットのスタッカーの状態を伝えるフラットケーブルを外し、その状態で試しに、動作確認を行って見た。するとどうだろう、ケーブルを一本外しただけで、不具合品と同様の不具合症状を呈する。「MechError」が出たり、モーターの空廻りのような音も聞こえる。原因はこれだ。

     早速に、不具合品のフラットケーブルの端末処理をもう一度やり直し、コネクタの取り付いた基板の該当端子から、制御基板側の端子との間で、ケーブルを含む導通確認を行い、間違いの無いことを確認してから、動作テストを行って見た。

     何事もなかったかのように正常に動作する。ディスプレーにもスタッカーの状態が正常に表示された。これで修理完了だ。ということは、あの部品は一体なんだったのだろうか。

    カバーを外す。大きなチェンジャーユニットが見える 後方から眺める。チェンジャーユニットの後方に制御基板がある 前面の操作パネルを外す チェンジャーユニットをシャシーから取り外す

    これがチェンジャーユニットだ。ユニット上部に問題のフラットケーブル。
    分解して元に戻せるだろうか?
    こんな小さな部品が中から転がり出てきた。これがくせものだった どんどん分解する。この後更に分解を進める 修理完了後のMDチェンジャー。動作良好だ

    ■不具合に至った経緯を推測する

     さて、ここで、このMDチェンジャーが不具合に至った経緯を考えて見たい。まず小さな部品、この部品は結果からしてこのMDチェンジャーのものでは無かった。この部品は何か別の装置の部品で、MDの挿入口から誤ってチェンジャーの中に入り込んだものと思われる。

     MDユニットの中のディスクの回転軸は磁気を帯びており、この部品が、回転軸付近にくっついてしまう。この状態で、MDを挿入して動作させると、(再現テストをしていないので断定できないが)この部品が邪魔になってMDディスクをきちんと内部に取り込めず「Mech Error」が表示される。(シーケンスがうまく行かないと何でもかんでもMechErrorになる)

     ここで所有者、あるいは、ジャンクとして一度転売されて次の新たなる所有者が、ダメ元覚悟で分解修理に挑戦したが、見るからに複雑そうなメカを見て、分解途中で修理を断念する。元に組立直してはみたが、その過程で、フラットケーブルの差し込みでもたつき、ケーブルの端末部分を壊してしまった。これが新たな不具合原因となり、修理前には無かったモーターの空回り音がするようになった、という訳だ。