かくいう私も、AIWAの最高峰デッキ XK-S9000 を一度手に入れてみたいと思うのだが、このデッキ、ヤフーオークション では中途半端な値段では落札出来ない。そこで、少し価格の落ちる弟機である XK-S7000 を手に入れることにした。 カタログ情報 を見る限り、弟機であっても、名機らしさは十分に味わえるはずだ。 いつものようにヤフーオークションでジャンク品を探す。ちょっと競り合いとなったが、送料込み5千円未満で、 手頃なジャンク品を手に入れることが出来た。出品時のジャンク理由は、次のようであった。
このデッキ、キャプスタン軸の回転はダイレクトドライブではない。 Victorのデッキのようにダイレクトドライブ回路の不具合で再生速度が速くなるというような不具合ではないはずだ。 ベルトドライブで、再生速度が速くなるというのはちょっと不可解だ。修理に若干の不安を 残しつつも、商品到着を待つことにした。 ■分解・修理 届いたジャンク品だが、想像していたよりも随分と綺麗だ。軽く乾拭きしただけで新品同様になった。ただし、 カセットリッドとディスプレーの各表示窓に、いくつか傷が見られた。表示窓は、透明樹脂で 出来ているだけに傷付き易く、経年を考慮するとこの程度は致し方ないところだが、気持ち良く使いたいので、 細番のサンドペーパーとコンパウンドで、傷が見えなくなるまで磨いておいた。
再生の不具合だが、調べてみたらヘッド部分が上昇していないことが原因であった。 通常、再生時には、キャプスタン軸にピンチローラが接触し一定速度でテープを送り出す。 それを巻き取りリールが回転して巻き取って行くのだが、ヘッド部分(ピンチローラー)が上昇しない場合には、 テープテンションがかからず、巻き取りリールが素早くテープを巻き取ってしまうことになる。 ヘッド部分が上昇しないのは、カセットメカ機構になんらかの不具合があるということだ。早速、ケースカバーを 開けて中の様子を確認してみる。
カセットメカを取り外すために分解を進める。難儀なことに、ヘッドからのシールドケーブルが基板の裏側に回りこんでいる。 仕方なしに、木製のベース台と一体になった重い裏蓋を外す。なんと、ケーブルの先は基板に半田付けとなっていた。 部品コストの削減か、はたまた音質向上のための直付けか、いずれにしろやっかいなことだ。半田付けをやり直す際に 接続に困らないように、半田付け箇所をデジカメに納めた後、半田鏝を使ってケーブルを取り外す。
カセットメカを取り出して見ると、2本のベルトが伸びてしまってゆるゆるになっていた。このメカでは、 ヘッドの上げ下げをキャプスタン軸の回転と連動させているようだ。いつものように、 ゴムシートから切り出した円形ベルトに交換する。
元通りに組立て、テストを行う。正常に動作した。この後、ヘッド周りを清掃し、消磁して修理完了である。 ■使用部品等 さて、修理は完了したが名機と呼ばれているだけに使用部品が気になる。各基板に搭載されているICを調べてみた。
■試 聴 さて、名機と呼ばれたデッキの音やいかに。 期待を込めて他機で録音したテープの再生音を確認してみたが、中年後期の年代に突入した私の耳では、違いは 判らなかった。 勿論、余分な雑音など聴こえるはずも無く、低域から高域までそつなく再生しているが、 他機に比べ特段優れた音には感じなかった。 やはり比較するならこのデッキで録音しなければなるまいと録音テストを行ってみた。このデッキには、 400Hzと10KHzの発振器が内臓されており、簡単にテープキャリブレーションが出来る。 3ヘッド機ならではのテープの再生音を聴きながら、BIASやLEVELを、ディスプレーに表示される 指示レベルまで調整を行った後、続いてCDからの再生音を録音して見た。CDからの信号は、もちろん光ケーブルにてデジタル入力した。 録音中にモニター切替によりテープとソースを比較すると、テープ再生音にやや高域の荒れが目立った。 キャリブレーションで高域レベルを合わせるためにBIASをやや浅めに調整したがこれが悪さをしているようだ。 デッキの指示どおりの調整ではまずいということだ。機械に任せないで自分の耳でやらないと駄目ということなんだろう。 このデッキで自己録音したテープの再生音だが、やはり大きな違いは感じられなかった。 私の耳では、特に気に入らない音でない限り、みんな同じ音に聴こえてしまう。 まともなリスニングルームも無い、修理作業場兼用の場所での比較だから、違いが判らないのも当然かもしれない。 |