DENON CDレシーバー・アンプ UD-M3の修理 2005.11.27

     ジャンク品です。ヤフオクにて1200円で落札。UD-M3は、先に落札したMDデッキDMD-M10と組み合わせ可能なアンプです。チューナーとCDプレーヤーを内臓しています。

     こちらも「電源が入らない」ということでしたが、通電するとパネルには時計の表示が出ます。マイコン回路は活きているようですし、電源回路も問題なさそうです。ところがCDトレイの開閉ボタンを押してもトレイが出て来ません。トレイを動かすモーターの音も聞こえません。更に前面パネルの各種ボタンを操作してもパネルの表示は変化しません。やはりどこかがおかしいようです。

     早速分解に取り掛かります。ケースを開けてみると、MDデッキの時とは打って変って、中はパーツがぎっしりという感じです。ちょっと分解する気が失せそうになりますが、気を取り直して分解を進めます。

     症状から見てCDメカへのモーター電源が切れているように思われます。まずは電源トランス近辺のヒューズを調べますが、このアンプにはガラス管ヒューズが一本しか見当たらず、切れてはいません。基盤の表や裏、CDメカを色々調べますが良く判りません。


    中央にあるICが7808。IN/OUTとも電圧無し
     ケース側面に定電圧電源回路を構成する3端子レギュレータが取り付けてありました。このレギュレータは、型番が7806と7808となっています。通電した状態でこのレギュレータのINとOUTをテスターで測定して見ると、7806は、INが22ボルト、OUTが6ボルトでしたが、7808の方は、INに電圧がありません。当然OUTにも出力電圧が出ていません。

     推定ですが6ボルトはマイコン等の回路に、8ボルトはモーター回路に供給されているのだろうと思われます。この8ボルトが無いためにトレイの開閉が出来ていないものと思われます。


    メカユニットの下部に基板がある

     次に7808のINにつながる基盤のパターンを追いかけて見ます。どこかで22ボルトに行き着くだろうと予測の元に仔細に見て往きます。すると「PR003」と書かれた抵抗のような形をした部品の所で途切れてしまいます。この部品をバイパスした先には22ボルトのラインがあり、そこからは、「PR004」と書かれた同じ部品で、7806のINからのパターンに接続されています。「PR004」は導通あり、「PR003」は導通なしです。


    基板上のピコヒューズ

     さて、この部品ですが、これはピコヒューズと呼ばれている基盤用の小さなヒューズです。一見抵抗に見えますのでヒューズだとは気がつきません。部品名先頭のPRは「PROTECTOR」の省略です。このヒューズがなぜ切れたのか原因は判りませんが、ヒューズ交換すればモーターは回るだろうと思います。

     取り合えずはヒューズをジャンパーでバイパスしてやる方法もありますが、ヒューズ切断の原因がまだ残っていると危険です。そこで、「PR004」と「PR003」は見た所仕様が同じようですので、「PR004」を外して「PR003」と交換することにします。仮にヒューズが飛んだ原因が残っていても、またヒューズが飛ぶだけで大事には至らない筈です。取り外した「PR004」の方には、PCのマザーボードから外した3Aのピコヒューズを付けておきます。「PR004」のヒューズ容量が今一つはっきりしませんが、こちらの回路は正常ですので3Aのヒューズで代用しておいても問題ないだろうとの判断です。

     ヒューズ交換を終えて通電してみます。この時点で特に問題はありません。7808のINには22ボルト、OUTには8ボルトが期待どおりに出ています。ここで、CDトレイの開閉ボタンを押してやるとガチャ・ウィーンという感じでトレイが飛び出して来ました。CDをトレイに載せて開閉ボタンを押します。また、ウィーン・ガチャという感じでトレイが閉まり、CDを飲み込みTOCの読み込みが始まりました。この後プレイボタンを押してやるとCDが回転し無事に再生しているようです。曲の飛び越し操作も順調にピックアップが移動しますので問題なさそうです。

     さて、これで一見落着かと思ったのですが、まだ問題があるようです。前面パネルの電源ボタンやその他のファンクションボタンの操作が一切効きません。CDの操作ボタンだけが有効です。前面パネルからボタン基盤を取り外し、回路を調べて見ました。CDの操作ボタンとその他の操作ボタンとは、回路が分離されています。


    基板にクラックが入っていた

     本体基盤に接続されるコネクタの端子側から各操作ボタンに向かってパターンを順に追い掛けて行きますと途中で行き止まりになります。行き止まりとなった箇所の近辺を仔細に眺めて見ると基盤のクラックが見つかりました。この部分のパターンにも亀裂が入っていました。

     この部分にアロンアルファを流し込み、十分に乾燥させた後、目の細かいサンドペーパーでパターンの表面を中の銅箔が見えるまでこすります。この上に半田を盛り上げてパターンを接続します。細い線でジャンパーを飛ばす方法もありますが見た目の良さでこちらの方法で修理しました。

     これで、全て動作するようになりました。チューナーの動作も問題ありません。MDデッキとシステム接続して連携動作を確認しましたがこちらも問題はありませんでした。システム接続に必要なケーブルですが、DENONの場合には、3.5φのミニステレオプラグのついたケーブルで代用できました。

     こうして、問題なく使えていたのですが、暫くして、またトレイが開閉出来なく なりました。調べて見ると、交換したヒューズがまた飛んでいます。特に変わった 操作をした訳ではありません。察するに、ヒューズが経年により劣化し、本来持ち 応える筈のモーター起動時の過電流に対して切断したのだと思われます。

     ヒューズ表面には、「500」という表示があります。これが、定格5Aを示す のか500mAを示すのか定かではありませんが、使われている目的から見て、50 0mAを意味しているのだと思います。この容量が妥当かどうかの論議は別として、 取り合えずPCのマザーボードから取り外した3Aのヒューズに交換して様子を見 ることにしました。

     このヒューズの位置ですが、3端子レギュレータの出力側ではなく入力側にあり ます。プレーヤーのモーター回路の短絡に対する回路保護という意味では少し奇異 です。その意味であれば、OUT側にあってしかるべきです。このヒューズの目的 ですが、3端子レギュレータの取り付け状況から察するにレギュレータの端子とケ ースとの接触事故による回路保護のような気がします。

     ヒューズ交換後、何度もトレイの開閉操作をやって見ましたが、ヒューズが飛ぶ ようなことはありませんでした。その後半月あまり、CDプレーヤーは問題なく動 作しています。