ビクターのTD-V931を、ヤフーオークションで入手した。勿論ジャンク品だ。競り合うことを覚悟していたが、あっさりと4,180円で落札してしまった。送料合わせて6,000円弱。毎回一万円前後にはね上がるTD-V931のオークション。この価格での入手なら良しとすべしか。
出品案内の説明は、次のとおり。
・電源入り再生/早送り/巻き戻しの動作しましたが音源出ません。再生速度非常に早いです。
・外観は汚れキズ多々あります。
TD-V931は、ダブルループキャプスタン、ダイレクトドライブ方式だが、このドライブ制御回路における定番の故障が起こっているようだ。
制御回路に使われている基板用電解コンデンサが経年で液漏れを起こし、コンデンサの容量が抜けてしまう。するとモーターの回転制御が効かなくなって、ドライブモーターが高速回転を起こしてしまうのだ。
このためテープの再生速度が早くなってしまう。電解コンデンサを交換すれば必ず直る。以前に修理したTD-V505と同じ症状だ。
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ジャンクのTD-V931。再生音がまるで早送りのようだ。 定番のダイレクトドライブ回路の不良だ。 |
保存状態がよくなく埃で汚れている。 ケースカバーも傷だらけ。 |
ケースカバーを開けて見る。 内部は綺麗だが、カビ臭い。 |
届いたTD-V931だが、出品説明にあったとおり再生速度が早い。これは問題ではない。保存状態が悪かったようで、随分と傷が目立つ。また、ARKBASE と呼ばれる分厚い底板も土埃で汚れている。ケースカバーを開けて見たら、なんとなくカビ臭い匂いがする。
カセットメカ取り付け部の底板部分にカビが発生している。湿気と埃と傷で見た目は非常に悪いが、幸いな事に煙草のヤニの匂いはしない。内部の基板類も綺麗なものだ。
まず先に分解・清掃を行い、その後にドライブ回路の修理を行った。修理後の動作は、特に問題ない。底板とケースカバーは、セミグロス(半艶)のブラックでスプレー塗装を施した。これで少しは見栄えが良くなったようだ。
TD-V931の内部の贅沢な造りからすると雑音は皆無だろうと思われる。それを確かめて見るべく無録音の新品カセットテープを再生し、音量を最大にしたヘッドフォンで再生音を確認してみた。意に反して、僅かだがジーというテープヒスノイズとは異なる不快なノイズが聴こえる。
試しに同様のテストを、TD-V731やXK-S7000で行ってみた。こちらでは、ジーというような音は全く聴こえない。TD-V931の設置場所を変えて見たが状況は変わらず。再生音源を「TAPE」から「SOURCE」に切り替えて見るとほぼ無音。テープ再生音に混じるジーという音はカセットメカ内部からの雑音と思われる。
良く眺めて見るとカセットメカの金属部分は、本体シャーシーとは絶縁されている。TD-V631やその他のデッキでは、カセットメカの金属部分が、シャーシーにケーブルあるいは取り付けビスによって接続されていた。試しに、クリップ付きケーブルで、カセットメカの金属部分とシャシーを接続してみたらジーという雑音がなくなった。早速にケーブルで接続、アースを取っておいた。
肝心の音質についてだが、残念ながら、その良し悪しを十分に評価出来る聴感を持ち合わせていないので、ただ単に、問題の無い音を奏でてくれた、とだけ述べるに留めておく。
以下に修理途中の写真を掲載しておく。
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カセットメカ。ファインアモルファスヘッドにダイレクトドライブ、ダブルキャプスタンだ。 底板にカビが発生している。 |
奥側信号入り口近くにデテントボリュームを設置。銅シールドが頼もしい。 |
電源回路とマイコン回路。 |
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アナログ信号基板は、プラグイン方式。銅版にてシールドしてある。 雑音対策は完璧だ。 |
録音用バイアス回路。中央のICはDolbyHX-Pro用NECの定番IC。 |
分解の開始。正面の化粧パネルを取り外し、中の基板を抜き取る。 |
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アナログ信号基板を抜き取った。 |
分解を進める。残す所は電源回路とバックパネルの取り外し。 |
部品は全て取り外してしまった。 この後、底板とシャーシーも切り離した。 |
カセットメカ部分の分解
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ここのパネルの裏側にダイレクトドライブモーターの制御基板がある。 |
基板を取り外す。 |
予想どおり2個の基板用電解コンデンサが液漏れを起こしていた。 コンデンサ周辺が漏れた液で腐食していた。 |
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16V10uFの一般コンデンサに交換する。左側コンデンサの手前にあったチップコンデンサは、端子が腐食しており外れてしまった。代替品の取り付けは諦める(無くても動作に問題は無いはず)。 |
メカユニットから取り外したメカ本体。 この後、綿棒とアルコールで綺麗に清掃を行う。 |