オークションの出品説明では、「電源が入らない」ということであったが、電源が入らないということは無く、テープ操作が効かないものであった。 多分ベルト切れなのだろうと想像する。 早速にカバーを開けて中を見てみる。想像どおりにベルト切れである。朽ちたベルトが3本出てきた。このベルト、ネチャネチャになっているので、うっかり触ると手が真っ黒になる。 ピンセットを使ってシャシー内に落ちているベルトの破片を拾い集めた。ベルト交換の為には分解が必要だ。清掃を兼ねて、すべて分解を行う。
シャーシー以外の部分にもハニカムのパターンが刻まれており、その徹底振りには感心する。 しかしシールドケースにまでハニカムパターンを刻んでも果たして効果があるのだろうか。ケースカバーの天板部の後方には放熱孔が設けてあり、そこから湿気が入り込んだのか電源トランス部分には錆らしきものが見える。 入力部のボリュームは、背面に設けてシールドを施してあり、音質重視の設計がなされてはいるが、シールドを開けて見ると中にあったのは普通の2連のボリュームであった。 回路の電解コンデンサには音響用が贅沢に使われているだけに、デテントボリュームでも中から出てくるかと思ったが、ちょっと意外であった。
メカ部のベルト交換を行う。メーカーから純正品を手に入れるとなると大変だ。ここはいつもの如くゴムシートから切り出したゴムベルトを代用品として取り付ける。 メカ制御のためのベルトは、手元に丁度サイズの良いものがあったのでそちらで代用した。多分何かのオーディオ機器から取り外したものだ。 ベルト交換後、動作確認できる所まで組み戻す。電源スィッチを入れるとキャプスタンが予定通りに廻り出した。ところが操作ボタンを押してもその反応が無い。 ディスプレーの表示も点線のバー表示がずっと点滅したままだ。オープン/クローズのボタンを押してもカセット扉が開閉しない。
不思議な事にデッキの正面を上に持ち上げた状態にして電源を入れるとうまく動作する時がある。ボタンの反応も良い。巻き戻しや早送りも動作する。所が水平に戻すと暫くしてまた何も反応しなくなる。 ベルト切れ以外の不具合がどこかに潜んでいるようだ。メカを制御している黄色のプーリーを手で廻してみてカセットドアの開閉やヘッドの上げ下げの動作を良く観察して見るが、どこが悪いのか良く判らない。 本体の設置状況によって動作が変わる不具合の起こる原因を色々と考えて見るがさっぱり判らない。 黄色のプーリーに連動したギヤ部には、マイコンにメカの状態を認識させるためのボリュームのような部品が取り付けてある。ひょっとして、これの接触不良でも起こっているのかも知れないと思い、部品を分解して見た。 この部品はボリュームではなく、複雑な接点を構成するロータリースィッチであった。ドアの開閉状態、ヘッドの上げ下げ状態などが複数の接点のオン・オフの組み合わせで判るようになっているようだ。 この接点の接触する部分を綿棒で綺麗に清掃を行い元に戻してやるとうまく動くようになった。これで修理完了だ。
さてこのデッキの音だが、なかなかに良い音がする。厚みのある暖かく優しい音と感じた。 再生動作に問題はない。次に録音に関するテストを行う。まずは、キャリブレーションの動作テストを行ってみる。 LEVELセッティングは良好であったが、BIASセッティングがもう一歩だ。目一杯浅目(ボリュームを左に絞る)にしてやっと指示通りとなる。 キャリブレーション用の内部発振器の出力が経年で低下しているのかもしれない。 続けてLINE-INにCDプレーヤーの出力を接続し録音テストを行って見る。3ヘッド機なので、ソースとテープのモニター切り替えが可能だ。 ソースの源音とテープの再生音を交互に切り替え、LEVELとBIASの調整を聴感を頼りに合わせ込んでやると問題なく録音できた。 |