PIONEER レシバー・アンプ SX-414の修理 2008.10.11

     30年前のオーディオ機器ともなれば、経年劣化でどこかに不具合が生じるものだが、当時の機器は、性能だけでなく家具の一部としてのデザインも誇っており、なかなかに手放しがたい。とはいえ、故障品をいつまでも大事に残しておくには、日本の住宅事情が許さず、いつしかゴミとして廃棄されてしまう。

     そんな製品の大半がリサイクルショップを通じてオークションに流れ、レトロなオーディオ機器に興味ある人がそれを入手する。そして、修理により見事機能復活したものや、あまりにも古くて部品の入手が難しく修理を断念したものなどが再度オークションに出品されることが多々ある。

     今回入手したPIONEERのステレオ レシーバー・アンプ「SX-414」もそんな機器の一つだ。もちろんジャンク品だ。SX-414は1972年の発売なので36年を経過している。まともな機種は望むべくもない。

     レトロなオーディオ機器に特別な興味があるわけではないが、実はこの機種、今から30年前に一度所有したことがある。その懐かしさでもう一度手にして見たいと思いジャンク品を購入した次第。


    ■SX-414との出合い

    当時の製品はデザインも優秀

     昭和48年入社したての頃、独身寮に入居させられた。その当時、独身寮は個室ではなく相部屋で、先住の先輩が、このSX-414と山水のスピーカー(SP-10)を所有していた。FMやレコードをよく聴かされたものだ。

     暫くして、このシステムをアップグレードするとのことで、不要となるSX-414とSP-10一式を2万円でどうかとの相談があり、譲り受けた次第。

    本体は廃棄したが、取扱説明書だけは30年間も大事に保存しておいた

     SX-414のアンプ回路は、単電源のSEPPで出力最終段にコンデンサがある。このため、電源投入時には、スピーカーから必ず「ボコッ」という不快音が出た。いわゆるポップノイズだ。これを無くすためにCR回路による遅延タイマー付きのリレー回路を組み込んだり、ダイヤルスケール部分に時計を組み込んだりと、音楽だけでなく改造も楽しんだものだが、その後、TRIOのKA-7300の購入を機に、分解・部品取りした後廃棄してしまった。

    ■ジャンクのSX-414

     今回は、FMステレオ受信が出来ず、かつダイヤルスケールのバックライトやダイヤル指針のランプ切れというジャンク品を入手した。このアンプ、出品者がコンデンサの一部を交換して暫く使っていたとのこと。コンデンサ交換したもののステレオ受信にはならず、ランプ切れと相まって放出されたのを私が入手したわけだ。

    背面のスピーカー端子が独特

     外観は、問題になるような箇所はなかった。傷も無く、外装の木製パネルも良好だ。つまみ類も綺麗だ。通電を行って見るとブルーに浮き上がるダイヤルスケールの半分が真っ暗だ。光るはずのダイヤル指針の先も消灯したまま。シグナルメータのバックライトも時折点灯しないことがある。更に、シグナルメータは、ランプの熱で茶色く変色している。

     試聴確認を行って見る。ヘッドフォンを前面のヘッドフォン端子に差し込み、ボリュームを最小にして、選局つまみを廻して見る。近くのFM局を選局するとシグナルメータの指針が大きく右に振れた。ボリュームを上げて行くと、綺麗な音でFM放送が聴こえてきたが、残念ながら聴こえる音はモノラルだ。試しにモノラル/ステレオの切替スィッチを操作して見るが、いずれもモノラルのままで、症状は回復しない。ちなみにAM放送は問題なく聴くことが出来た。

    ■SX-414の修理

     まずは、見た目の部分の修理から開始する。木製パネルを取り外して内部を見てみると、確かに何点かの電解コンデンサが交換してあった。一度清掃されたためか、あるいは密閉構造のためなのか、内部に埃などの堆積は無い。

    バックライト類の修理

     20数年前にSX-414を分解した時から、シグナルメータやダイヤル指針を大事に保存しておいたのだが、それらが役に立つ時が来たようだ。シグナルメータとダイヤル指針を保存しておいたものと交換する。ステレオ受信時に点灯する赤いSTEREO表示のランプも、テスターで導通を確認して見ると球切れしていたので、手持ちの豆球と交換する。

     バックライトのランプだが、ガラス管ヒューズのような形状をしており、現在では、同種品の入手は難しい。そこで超高輝度白色LEDを使った照明回路を工作し、ランプと交換した。

    ランプ一個について2個のLEDを取り付けた
    裏側のLEDの配線。ランプ用の交流電源をそのまま使用する
    超高輝度LEDは点灯するとまぶしい程の明るさだ
    パネルを通すと程よい明るさになる

    FM受信回路の修理
    当時はこんな図面が添付されていた

     保存しておいた取扱説明書に挟み込まれていた回路図を基に、FMステレオ復調回路を探し当て、その回路を構成するコアやボリュームを調整して見たが、一向にステレオ受信にならない。19KHzパイロット信号増幅回路の出力をオシロスコープで観測してみると出力が全然大きくならない。

     受信基板上の電解コンデンサを眺めて見ると、基板出力のカップリングコンデンサは交換されているのだが、その他のコンデンサは交換されていない。パイロット信号増幅回路にも電解コンデンサが一個使われており、もしやと思いこれを手持ちのものと交換してみた所、その後のコアやボリュームの調整で、大きな増幅出力が得られるようになりステレオ受信できるようになった。ボリュームとコアを廻してパイロット出力が最大になるように出力調整する。

     この後、MDや携帯型のデジタルオーディオの出力をFM送信する簡易送信機を使って左右セパレーションの調整を行った。簡易送信機に左チャネルのみ1KHzの正弦波を加えてSX-414で受信する。ステレオ復調回路のコアを廻すと、音が右から聞こえたり左から聞こえたりする。右出力をオシロスコープで観測しこの出力が最小となる点にコアをセットした。

    バリコンを使ったAM/FMチューナー
    FMステレオ復調回路
    電解コンデンサを交換し、調整して回復
    左右の分離調整に使った簡易送信機

     FM放送局を選局して見るとSTEREOランプが点灯し綺麗にステレオ受信する。受信不良の修理はこれで完了だ。


    その他

     アンプ基板の電解コンデンサを見てみると、どうやら半田作業のやり易い所だけ交換されている感じだ。とはいえSEPP最終段のコンデンサは交換されているのでこれ以上の交換は不要と判断し、電源部分の平滑用コンデンサのみ交換した。

     SX-414には電源投入時のポップノイズを避けるためのリレー回路は無い。このため30年前には、リレー回路を組み込んだ。今回も同様にリレー回路を一度は組み込んで見たのだが、音出しアンプは他にもあり、これから先、このSX-414でスピーカーを鳴らすことは無く、リレー回路は取り外してしまった。

    右出力カップリングコンデンサ
    左出力カップリングコンデンサ
    電源平滑コンデンサ
    2200uFから4700uFに増量
    あり合わせの部品で構成したスピーカーリレー回路
    一石なので遅延用コンデンサが大きくなってしまった

     昔が懐かしくて手に入れたのだから再度手放すことはしたくない。といって使わなければ粗大ゴミと化す。何とか活用の道はないかと思案、現在は、ベッドの傍に設置しイヤフォーンで眠る前にFMを聴くような使い方をしている。午前0時からのジェットストリームがお気に入りの番組となり毎日眠い思いをしている。