Nakamichi カセットデッキ RX-303の修理 2015.12.23

    ■ ナカミチ RX−303

     ジャンクのナカミチ・オートリバースカセットデッキ「RX−303」

     ナカミチのオートリバースカセットデッキ「RX-303」をヤフーオークションで入手しました。勿論ジャンク品です。

     オークションの商品説明は、次の通りでした。リサイクルショップからの出品です。

     ・通電はしましたが、再生が出来ませんでした。
     ・カセットトレイが自動で開かず、手で引っ張らないと開かない状態です。
     ・背面にテープが貼ってあります。全体的に傷・擦れ・汚れが多数ございます。

     このような説明だったからでしょうか意外と安価に落札できました。

     「RX-303」は、カセットハーフ自体が自動で回転してリバース再生するという珍しいデッキです。兄貴分の「RX-505」が3ヘッドのダブルループキャプスタンに対して、本機は2ヘッドダブルループキャプスタンとなっています。また弟分の「RX-202」は、2ヘッドシングルキャプスタンとなっていました。

     リモコン接続端子になぜかテープが

     兄貴分の「RX-505」についてはこちらのサイトに詳しい解説があります。

     さて、届いたRX−303ですが、動作確認をしてみると、説明どおりにカセットトレイは手で引っ張らないと開きません。再生に関しては、動くときと動かない時があります。早送りや巻き戻しは正常です。

     概観は説明に反して、いたって綺麗です。傷はほとんどありません。裏面のテープだけがやけに目立ちます。

     うまく再生できた時に確認した音は少しくぐもったような音がします。ナカミチの定評ある音とはとても思えません。ヘッドのアジマスが狂っているのかも知れません。


    ■ 分解・修理

     不具合は、おそらくゴムベルトのヘタリだと思われます。分解してベルトを交換するだけで復活するはずです。音の方は、ヘッド調整が必要なようです。

     カバーを開けてみました。中央にデッキメカ、左右に基板が配置されています。こちらのデッキメカは、2ヘッドながらもダブルループキャプスタンとなっておりナカミチオリジナルのデッキメカと思います。ちなみに弟分の「RX-202」のメカは三協精機のOEM品だったようです。

     このデッキメカには、ゴムベルトが3本使われています。一本は、平ベルトでキャプスタン用です。こちらは問題ありません。

     もう一本は、角ベルトでモード切り換え用です。このベルトが経年劣化で緩んで、再生動作の開始に支障を来たしています。こんなベルトですが早送りや巻き戻しへのモード切り換えは出来ています。早送りや巻き戻し自体は、振り子式のアイドラーで行っておりこちらは問題ありません。

     残るもう一本のベルトはテープカウンター回転用です。こちらはたいしたトルクが要る訳ではありませんので問題なく動作しています。

    トップカバーを開けて見ました。右側がオーデイオ基板で左がマイコン基板になっています。中央は電源基板です。 裏蓋も外して見ました。特に特徴らしきものは無いです。 カセットメカを反対側から見てます。右からモード切り換えモータ、キャプスタンモータ、リールモータの3つのモータが使われています。


    カセットメカです。平ベルト(右)と角ベルト(左)が見えます。 モード切り換え用のベルトが劣化で緩んでいるようです。


    (モード切り換えベルトの交換)

     モード切り換え用の角ベルトは、デッキメカを取り外さなくても交換できます。手持ちの中から適当なベルトを探して交換しました。

     トレイの開閉はまだ手で補助しないと駄目ですが、ベルト交換後の再生、早送り、巻き戻しの切り替えは、ボタン一発でキビキビと動くようになりました。

    モーターの下の部分に大きな窓が開けてありますので、ここからベルト交換が出来ます。
    横から見るとこんな感じです。
    左が外したベルト、右が交換するベルトです。


    (トレイ開閉ベルトの交換)

     トレイ開閉用ベルトは、カセットホルダーのA・B面反転動作も行っています。ちなみにリバースボタンを押して反転動作をさせて見ると、回転途中で止まってしまいます。こちらも手の補助が必要です。

     このベルトは、トレイ開閉メカの中に組み込まれており、ケースカバーを開けただけでは見ることができません。トレイメカやデッキメカを取り外して分解しないことには交換することは出来ません。

     トレイメカとデッキメカは一体となっていますのでデッキメカ毎取り外します。トレイメカは、本体シャーシーとはビス3本で止まっているだけです。3本のビスを緩めれば簡単に取り外せるのですが、前準備が必要です。

     最初にフロントパネルを外します。次に、フロント上部にある左右に渡っているスチール製の支えを外します。続いてデッキメカの左にあるボタンパネル、右にあるスィッチパネルを外します。これらは、ケーブルを外す必要はありません。デッキメカを取り外す際に邪魔にならないよう緩めるだけでいいです。

     最後にデッキメカやトレイメカから基板に渡っているケーブルを外します。ケーブルはコネクタ接続ですので外すのは容易です。ただ一箇所、トレイ開閉用モーターからのアース線が電源基板に半田付けとなっています。外す時は切断し、戻す時に半田付けをやり直すと作業は楽です。

    フロント上部を外してボタンパネルを外します。
    唯一半田付けのアース線。


     ここまでやれば後はトレイメカをシャーシーに止めている3本のビスを外せば簡単にメカを取り出せます。ビス1本は電源基板の真下にあります。後の2本はトレイ前側の下部にあります。メカを取り出した後、ボタンパネルやスィッチパネルは、作業中にケーブルを痛めないように仮止めしておきます。

    カセットメカ、トレイメカを外した後です。 カセットメカとトレイメカが一体で取り出せました。ボタンパネルやスィッチパネルを仮止めしています。
    取り出したメカです。


     一体になっているメカを分離します。この後トレイメカを分解してゴムベルトを交換しますが、ここで注意するのは、トレイの位置を検出しているボリュームの回転位置です。元に戻す時には同じ位置に合わせる必要があります。

    カセットメカとトレイメカを分離します。ベルトはトレイメカの中にあります。
    右上のモーターがトレイ開閉用モーターです。左下のボリュームはトレイの位置検出用です。ボリュームの位置合わせ用にギヤにマーキングしておきます。 ベルト交換後の取り外した古いベルトです。


    (ヘッドのアジマス調整)

    ヘッドが少し傾いている?
     ヘッド部分を良くみるとなんとなく傾いているように見えます。良く聞き慣れたテープを再生しながらアジマスを調整してみました。

     ナカミチらしい音に戻ったような気がします。

    ■ さいごに

     ベルト2本の交換とアジマス調整できちんと動作するようになりました。裏面のテープは剥がして綺麗にしておきました。

     カセットハーフが前に飛び出して来てクルリと回転する様は確かに見ていて楽しいものです。暫く使ってみようと思います。