KENWOOD 6連装CDチェンジャー付きマイクロコンポ MS-D7の修理 2006.01.03

    MS−D7というコンポ

     94年11月に購入したコンポが、KENWOOD のマイクロコンポ MS-D7 です。このコンポ、マイクロの名前が付いているとおり、小型で机の上に設置しても邪魔になりません。メーカーのカタログでも、その点を強調してました。

     「カセットデッキ+AM/FMラジオ+CDプレーヤー+AUX」の当時としては、極めて一般的なコンポです。MDプレーヤー搭載品は、この当時、まだ少なかったように記憶してます。

     小型ながらも6枚のCDチェンジャー機能が付いていて、6枚のCDから、好きな曲をどんな順番にでも演奏することが出来ました。勿論、カセットへのプログラム録音も可能です。店頭で商品説明を受けていた時、これが面白そうで購入を決めました。

     レンタルショップからCDを借りて来ては、せっせ、せっせとカセットテープに録音していました。2年程使用した頃、カセットのB面が録音も再生も出来なくなりました。B面への切換えが出来ません。

     分解して、カセットのメカ部分を調べて見ると、A面からB面への切換えを制御している電磁スィッチが怪しげな雰囲気です。最初ベルトのへたりかと思ったのですが、ベルトは問題ありませんでした。これでは、自己修理不能としてB面の録音再生は諦めることにしました。

     CDプレーヤーやAM/FMラジオ、AUX入力によるアンプとしての機能はまだまだ使えますので、PCのサウンド出力をAUX入力につなぎ、PCのオーディオアンプとして活用することにしました。

     その後1年程して、CDが音飛びするようになりました。クリーニングディスクを使って見ましたが症状は改善しません。日が立つに連れ、音飛びは激しくなりました。まぁCDは、PCでも聞けますので、このコンポのCDプレーヤーも諦めることにしました。

     その内、カセットの方もベルトがへたってきて、A面での再生も思うようにならなくなり、カセットはもう完全に諦めざるを得なくなりました。

     これ以降、このコンポは、FMラジオとPCのアンプとしての役割を担うことになります。

     こうして、今年(2005年)の夏ごろまで、PCのアンプとしてずっと使っていたのですが、MD-X60の分解修理をしたついでに、このCDプレーヤーの再修理に挑戦しました。

     本体を分解、CDチェンジャーのメカ部分を取り外し、ピックアップ部分を拡大鏡を使って良く調べてみるとレンズ表面が曇っているように見えます。そこで、駄目元で、綿棒にアルコールをタップリ染み込ませてレンズ表面や、その周りをごしごしという感じで清掃しました。レンズに傷がつくとまずいのですが、どうせ壊れているものだからと、気にせずに行いました。

     さてその結果ですが、見事に復活です。CDをきちんと認識しますし、再生時の音飛びもおこりません。CDチェンジャーによる順次演奏も正しく出来ます。数年ぶりにCDプレーヤーが蘇りました。

     残るは、カセットデッキのメカ修理です。こちらは、部品を入手するしかありません。古い製品ですのでメーカも期待できず、ヤフオクを探して見ました。MS-D7が2台程見つかりましたが、ともにカセット不良、CDプレーヤー不良とあります。カセットがダメでは期待出来ません。


    MS−E8Gの入手と修理

     同じ KENWOOD のコンポで MS-E8G という、似たような機種がもう一台見つかりました。オークションの商品案内の写真や型番から想像するに、MS-D7の後継機種と思われます。こちらも、CDプレーヤーは不良となっていましたが、カセットは問題無いとのことです。写真からの判断ですが、カセットやCDチェンジャーのメカユニットは、D7とほぼ同じ物を使っているだろうと思われます。値段もジャンク品で手頃な価格(800円)でしたので、部品取りとしてゲットしました。

     MS-E8Gですが、MS-D7と比較して見ると若干の違いがあります。「6CDチェンジャー+カセット+FM/AMラジオ」と基本機能は、全く同じですが、型番にGが付いているように、CD−Gに対応しています。CD−Gは映像を含むCDの規格でカラオケ用CDのための規格のようです。MS-E8Gは、カラオケを家庭で手軽に楽しめるようにとの企画で開発された商品の用です。背面には、ビデオ出力端子がありますし、天板には、マイク入力端子やマイクボリューム、エコーボリュームが設けてあります。

     その他の違いですが、前面パネルのボリュームがD7の手回しのアナログボリュームから増減スィッチによるデジタルボリュームに変わっています。その他には、音質調整機能が新たに付いています。本体の構造は、前面パネルのデザインが異なるもののD7と全く同じです。

    左がMS-D7
    右がMS-E8G
    スピーカー
    内部構造は同じ
    操作パネル裏面
    本体内部
    背面端子

     MS-E8Gを動かして見ると、確かにカセットは大丈夫なようですが、テープの巻き終わりの停止操作に難がありました。巻き終わっても暫くカチカチと音がしています。リバース動作は問題ないようです。早送り、巻き戻しも出来ます。ベルトのへたりが心配ですが、D7が94年製造、E8が96年製造ですので、2年の余裕があるということでしょうか。とはいえ、そろそろ10年経過になりますので油断はできません。代替の新品ベルトを調達しておくべきでしょう。

     FMなんですが、どうもステレオ検出がうまくいかないようです。ステレオ受信しているはずなのに、「STEREO」の表示が付きません。CDプレーヤーは、オークションの商品案内にも書かれていたように、チェンジャーメカの動作が全くダメです。それと、電源スィッチも不良です。電源スィッチを操作しても電源の入り切りが出来ません。このコンポでは、入力源を切り替えてやると自動的に電源が入りますので「電源入り」操作は問題ないのですが、「電源切り」が出来ないのは不便です。電源ケーブルを抜けば電源を切ることは出来ますが時計がリセットされてしまいます。スィッチの不良かマイコンの不良かそれともCDのメカユニットの不良が影響しているのかも知れません。

     MS-E8Gのカセットユニットを取り外してMS-D7に取り付けるのが目的ですが、暫くはこのMS-E8Gの修理に挑戦して遊んで見ます。

     まずは、電源スィッチを調べて見ます。本体を分解して、基盤上の電源スィッチが取り付けてある端子をピンセットで短絡して見ますと電源が入ります。本体の回路に異常は無く、明らかにスイッチ不良と断定できます。スィッチを接点洗浄液で清掃した上スィッチの動作を確認します。うまく接点が導通してくれるようになりましたが、なぜかこのスィッチを押しても電源が入りません。不思議に思い、基盤を良く調べて見ると、スィッチの接点を取り付けているハンダにクラックが見えます。ハンダクラックで接触不良になっているようです。ハンダをやり直して、電源スィッチ不良の件は修理完了です。

     次に、FM受信不良の調査です。KISS−FMの89.9MHzに合わせて見ます。ここでステレオ受信すべき所がステレオ表示が出ず音にも雑音が混じっています。周波数を少しずらし89.8MHzにした所、ステレオ表示が出て音もクリアになりました。別の周波数でもチェックして見ると同じ様な症状です。表示と実際の周波数が0.1MHzずれているようです。そこで、チューナー基盤上のそれらしき調整用トリマーをいじくって見た所うまく合わせることが出来ました。

     CDチェンジャーの動作は全然ダメです。一応ピックアップのレンズを清掃しましたが、チェンジャーの機構そのものの不良のようです。うまく動作しません。壊れても構わない代物ですので、CDチェンジャーの動作機構を知る意味も兼ねて、チェンジャーの分解に取り掛かりました。大体の構造を理解した上で、組み立てて元に戻そうとしたのですが、トレイを動かすギヤの噛み合わせが良く分かりません。適当に組み立てると、トレイが出てこなかったり、出るタイミングに手で無理やり引っ張り出してやると、この後うまく引き込まないとか、動作がまるで無茶苦茶です。

     このギヤの噛み合わせ位置を正しい位置にするのに丸々一日を費やしてしまいました。なんとかうまく納まるようになったものの電源を入れた時に、CDチェンジャーのエラーが発生してトレイが飛び出してきます。この時モーターの空回り音が聞こえます。チェンジャーのCDカセットを動かしているモーターからのようです。そこで、このモーターのゴムベルトを調べて見るとヘタリが来ているようですので取り合えず輪ゴムに交換して動作を見てみました。これにより、電源を入れた直後のエラーはなくなりましたが、CDを読み込まそうとすると別のエラーが発生します。

     CDの挿入を検出しているセンサーが悪いのか、ピックアップが悪いのか、原因が今一つはっきりしません。レーザーダイオードの出力調整らしきボリュームをいじくって見ても症状は同じで回復しません。やけくそでピックアップも分解してみました。特に内部に汚れもありません。このピックアップは内部の反射鏡に埃はつき難いような構造になっていました。ともかく、このチェンジャー、目視では悪い所はどこにも見当たりません。ここで、このチェンジャーの修理は諦めることにしました。

     ほぼジャンクで手に入れたMS−E8Gは、CDチェンジャーを除いては問題ない状態になりました。MS−D7のCDチェンジャーと交換すれば、MS−E8Gが生き返ることになりますが、当方としては、MS−E8GのカセットをMS−D7に移植するのが目的です。

     MS−E8G、MS−D7の両機からカセットユニット部分を取り外します。この時、カセットユニットと基板を繋ぐ2本あるケーブルの内一本が、コネクタの機構設計がまずくて簡単に外れずに、力まかせに引っ張ったものですから、両機とも基板側のコネクタ端子を壊してしまいました。

     MS−E8Gから外したユニットをMS−D7に取り付けるのですが、ケーブルと基板の接続が問題です。端子を一応ハンダ付けなどして修正したのですが、うまく繋がりません。この端子とケーブルの問題で時間をつぶしてしまい、挙句の果てには端子間を短絡させて本体のカセット制御回路を壊してしまったようです。カセットのモーターへ供給する10ボルトの電圧が出てこなくなりました。元の目論見が外れてしまいました。こうなると元に戻すしかありません。

     カセットユニットをMS−E8Gに戻し、MS−D7とCDチェンジャーを交換して、MS−D7に成り代わってMS−E8Gを蘇らせることにします。

     さて、カセットユニットを元に戻すのですが、こちらも基盤とユニットを繋ぐケーブルの問題が残っています。同じ過ちはしたくないので、コネクタ端子を修理して再利用するのは止めて、ケーブルを直接基板にハンダ付けしました。カセットユニットを戻して、再度動作確認をして見ると、早送りや巻き戻しがうまく行きません。ユニットをいじくっている間にゴムベルトのヘタリの影響が出るようになったようです。ベルト交換が必要です。

     古い製品ですのでベルトの在庫が心配でしたが、ともかくKENWOODに在庫を問い合わせて見ました。返事はまだ供給可能ということでしたので、早速に発注。4〜5日して、交換ベルトが送られて来ましたので、取り替えて動作テストして見ました。特に問題はありません。うまく動作します。

     次にMS−D7からCDチェンジャーを取り外し、MS−E8Gのチェンジャーと交換しました。CDチェンジャーの動作ですが、なぜかMS−E8Gのものと同じような不具合を見せる時があります。電源を入れた時に、CDチェンジャーのエラーが発生してトレイが飛び出してくるというものです。取り外し、取り付けのショックでモーターのベルトのヘタリの影響が出るようになりました。ベルトの交換が必要です。

     輪ゴムでの代用は一時凌ぎにしかなりません。ベルトを注文してもいいのですが、ここは一つベルトの自作に挑戦して見ました。元のベルトのサイズは、20mmφ(径)X1.4mm(厚)X1.4mm(太)の角ベルトです。

     近くのホームセンターにて黒いゴムシートを探してみました。厚みが1ミリ、2ミリ、3ミリと1ミリ単位の厚さのものしかありません。1.5ミリ厚のものがあれば良かったのですが、取り合えず3ミリ厚のシートを一枚購入し、円形カッターを使って、シートから円形のベルトを切り出します。20ミリX2ミリX3ミリのゴムベルトが出来ましたのでこれを半分の厚みにカッターで切り、代替ベルトとしました。このベルトの交換によりCDチェンジャーの動作不具合は直りました。

     これで修理完了です。結果として、MS−D7を修理するつもりがMS−E8Gを修理することになってしまった訳ですが、まぁこれも仕方ありません。修理後のMS−E8Gで、CDを聴くと何枚かの内、音飛びが起こります。CD−Rなんかではそれが顕著です。CDチェンジャーはMS−D7に付いていた時にレンズ清掃で一応回復した訳ですが、やはりレーザーダイオードの出力が低下しているのかも知れません。レーザーダイオードの出力調整が必要です。


    ジャンク品を使ってMS−D7を再復活する

    こちらは修理後の状態

     こうして、MS−D7はお蔵入り、代わりにMS−E8Gで楽しんでいましたが、やはり愛着のあるMS−D7をなんとか復活させたく、またも懲りずにヤフオクを調べて見ました。すると、単にジャンクとだけ記載されたMS−D7のジャンク品が1台見つかりました。CD、カセットの動作は不明です。これはひょっとしてとの思いで落札、値段は100円でした。

     ジャンク品が届き、早速調べてみました。電源ケーブルを電源コンセントに差し込みます。正常品ならここで蛍光表示パネルに「12:00」の点滅が表示されますが真っ暗です。電源スィッチを操作しても何の反応もありません。コンポの操作は全てマイコンが行っていますので、症状からしてマイコン不良かも知れません。マイコン不良なら手の打ち用がありません。

     このMS−D7のカセットやCDチェンジャーが正常なのかどうかすら判りません。CDチェンジャーは外して、お蔵入りしているMS−D7に装着してやれば動作確認は出来ますが、これで動いてもこちらの思いとしては50%です。このジャンク品のカセットと基板を、ケーブルが繋がったまま流用したい訳です。なんとしても、この基板が動作しないことには話になりません。

     ジャンク品を分解、基板裏側のマイコン(と思われるIC)周辺の配線パターンをテスターを使って調べて見ます。パターン切れがないか、電圧は正常か、などを見ていきますが、配線図無し、どんな回路構成かも判りません。元々正常な状態の電圧などが判ってませんので良否の判断がつきません。そこで、お蔵入りしているMS−D7を分解、こちらと比較しながら調査しました。

     一時は迷宮入りかと思いましたが、正常品と比較して見ると簡単に原因が判りました。正常品ではマイコンへ5ボルトが供給されていますが、不良品では、その電圧がありません。マイコンへの電圧がどこかで途切れています。マイコンから電源回路に向けてパターンを順に追いかけて行きます。比較対照品がありますので手早く進めることが出来ます。そして突き止めた原因は、定電圧電源用トランジスタの足の部分の半田クラックです。これにより足と基板のパターンとが接触不良になり、電源が供給できていなかったというものです。これも目視ではなかなか見つけ難い故障です。半田をやり直して電源が入るようになりました。

     電源が入りマイコンも動くようになりましたので、カセットやチューナー、CDチェンジャーなど一通りのテストをして見ました。CDチェンジャーは、光ピックアップのレンズが汚れていましたのでアルコールと綿棒で清掃してやったぐらいで、問題無く動くようになりました。カセットのゴムベルトの伸びが心配だったのですが、一度交換でもしたあったのでしょうか、ゴムのヘタリは全く無く動作はスムーズでした。このジャンク品、電源部分の半田クラック以外悪い所は何も無かったということです。

     ジャンク品がこれで問題なく動作するようになりましたがこのまま使う気にはならず、お蔵入りしているMS−D7と、今回修理したMS−D7の各部品の綺麗な方だけを寄せ集めて一台を組立てました。とはいえ、カセットや基板、CDチェンジャーはジャンク品からの流用ですので、心臓部はジャンクで、表の面だけは、前のMS−D7ということになります。


    左:完動品MS-D7,中:完動品MS-E8G,右:ジャンクMS-D7

     これまでの一連の修理作業で、完動品のMS−E8GとMS−D7の2台のマイクロコンポとジャンクなMS−D7一台が出来上がったことになります。MS−E8Gは、元々部品取り目的の入手でしたので不要です。ジャンクなMS−D7も邪魔なだけです。これら2台はオークションに出して見ようと思っています。