こんな案内ですので誰とも競り合う事もありませんでした。製造から10年近く経っており、ラジカセは持ち運びが可能なだけに使用に伴う傷みも大きいと予想され、CDやMDの動作が現在でも正常であるとはとても思えないのですが一縷の望みを託して落札しました。このラジカセに使われているMDメカは、時期的に見て、ONKYOのミニコンポ「FR-V5」やDENONのMDデッキ「DMD-M10」のMDメカと同じ物が使われていると思われます。ラジカセのCDは駄目でもMDだけでも動いていてくれれば、手持ちのミニコンポやMDデッキの修理用予備品として使えます。正に部品取り目的で落札した次第です。 出品者から物が届き、早速に外観からチェックを開始します。年数の割りには全体的に綺麗なほうです。大きな当て傷も無く良好です。ただスピーカーネット左右ともに一部擦れによる破れが見受けられます。気にしなければ大した事のないものです。
動作診断 いつも通りにラジオからチェックを始めます。ロッドアンテナを伸ばしFMの周波数をNHK神戸やKISS-FMに合わせます。放送がきれいに聴こえてきました。本体前面のボリュームボタンで音量を操作します。このラジカセのボリュームは電子ボリュームですのでガリること無く良好です。AMの診断はほとんど聴くことが無いので省略して、CDのチェックに移ります。 上面にあるCDの蓋をオープンします。ピックアップレンズに汚れは無さそうです。手持ちのCD-Rを放り込んで蓋を閉じます。一瞬CD-Rの回転音が聞こえ、前面パネルに TOC READING が表示された後、すぐに曲数と演奏時間が表示されました。CDのピックアップはまだまだ元気なようです。CD-Rの認識は問題ないようです。
これらのボタンを押して見ると、CDの「プレイ/ポーズ」ボタンは全く反応がありません。TAPEの「プレイ」ボタンも同様です。TAPEの「ストップ」ボタンは、パネルのソース表示がCDの時に、このボタンを押してやるとソース表示がTAPEに変りますのでちゃんと反応しているようです。 CDの「ストップ」ボタンですが、こちらは滅茶苦茶な反応を示します。何度も押して見ると、TAPEのストップになったり、TAPEの早送りや再生になります。なぜかCDの再生にはなりません。これらの症状は、スィッチが接触不良を起こすと良く現れる現象です。経年にて内部のマイクロスィッチが接触不良を起こしているように思われます。 TAPEの動作ですが、こちらは、カセットトレイにテープを入れた後、CDの「ストップ」ボタンを何度も押して見て運良くテープが廻り出した時に確認しました。テープが廻るのでゴムベルトは切れていないのですが、再生音がどうもすっきりしません。ヘッドの汚れなのか、あるいはゴムベルトのヘタリなのか。どちらにしろ分解して見れば原因はすぐに判るだろうと思います。 次に期待のMDメカの検査に移ります。まずは、MD挿入口から中を覗いて見ます。ペンライトで中を照らしながらルーペで拡大して見ると、埃が内部に結構溜まっています。これだとMDの認識は多分駄目だろうと思いながら、手持ちの録音済みMDを挿入してみますと、 TOC READING が数秒表示された後、意に反してトラック数、総演奏時間がパネルに表示されました。ちなみにMDの「プレイ」ボタンを押して見ると再生が始まりました。ジョグダイヤルを廻して選曲操作をすると、きちんと追従して再生します。MDの再生動作は問題ないようです。録音確認は、分解してMDメカ内部の埃を払ってからにします。この状態でテストして、UTOCの書き込みに失敗でもするとMD一枚がお釈迦になってしまいます。 分解の前にさて、CDは認識できているので再生は問題無いと思われますが、本体を分解する前にやはりCDの再生動作を確認しておきたいものです。本体を分解しないで、CDのプレイボタンを修理する方法はないか考えます。 CDとTAPEの4つの操作ボタンの内側に、内部のスィッチ部分にまで届くように適量の接点復活用のイソプロピルアルコールを流し込みボタンをぐりぐりしました。これによりスィッチの接点表面が清浄されれば、ボタン機能が復活するはずです。
ボタン周りの余分なアルコールをティッシュペーパーで吸い取りアルコールが十分に蒸発した事を確認してからCDの再生確認を行いました。CDをセットし、プレイボタンを押すとCDが再生を始めました。ジョグダイヤルを廻しての選曲操作も良好です。CDのストップボタンもストップ動作以外の事は起こらなくなりました。これでCDの機能は全然問題無いということが確認できました。 このラジカセですが、本体背面にミニジャックのAUX入力があります。こちらの動作確認は、リモコンが無いと不可能です。この機種では、入力ソースをAUXに切り替えるにはリモコンが必要です。 AUX入力は、iPodなどの携帯型デジタルプレーヤーの外部アンプとして使うことが出来るので残念です。ざっとオークションを見渡してみると該当のリモコンが出品されているようですが、価格的に入手する気にはなりません。 分解と清掃
背面のネジを外した後は簡単にパーツ分解できました。内部にたまった埃だけでなく手垢による汚れなども一掃するために、パーツを全て分解し、ケースやボタン、CD蓋、カセット蓋、水洗い可能なものは全て中性洗剤で洗浄しました。
カセットメカの部分には、綿埃のようなものがぎっしりと付着していました。これらを刷毛を使って綺麗にぬぐい、ヘッドや、ピンチローラ、キャプスタン軸は、アルコールでクリーニングしました。メカを良く観察して見ると、このカセットはオートリバース機構は組み込まれていないようです。再生・録音は一方向のみで、B面の再生や録音は手でカセットテープを裏返すことになります。またドルビーノイズリダクションなどの気の効いた機能は当然の如く省略されています。このクラスのラジカセでは、コスト的には無理というものなのでしょう。
カセットメカには2本のゴムベルトが使われてましたがいずれも問題なさそうでした。ヘタリは感じられないので交換には至っていません。 CDメカについては、汚れは大したこともなく、簡単に埃を払って、ピックアップ機構のグリスを清掃しただけです。MDメカについては、内部の埃が酷く、メカユニットを分解して丁寧に埃を取り除くとともに、アルコールでレンズ部分を清掃しました。録音ヘッドを傷めないように注意して作業します。 なお、このMDメカですが、金属ケースの部分だけ見ていると「FR-V5」のものと同じものなのですが、制御基板は異なっていました。当初目論んでいた。予備部品としての部品取り活用は諦めざるを得ないようです。ここは、素直にラジカセとして使うことにします。 組立とテスト(ここでMDに問題発生)清掃の終わったパーツを元通りに組み立て直して行きます。特に難しい部分はありません。組立終えて最終テストを行います。 CDの再生を再確認した後、分解前には出来ていなかったテープへの録音動作を確認します。録音に先立ってヘッドの消磁をしておきます。テープの録音確認は、MDの再生の再確認も兼ねてMDを音源としてテープへの録音を行いました。録音したテープを再生して見ました所、綺麗に録音出来ています。分解前にテストした時よりも印象は良いです。これはヘッドの消磁の効果とノイズリダクションの有無によるものと思われます。最初にテストしたテープは、ドルビーBのテープです。このラジカセにはドルビーは搭載されていませんのでその差が出たのかと思います。本機で録音して本機で聴く分には問題ないようです。 最後にMDの録音確認を行います。録音済みのMDを挿入し、消去しようと「TOC EDIT」ボタンを押すと TOC W ERR と表示が出ます。「EDIT/MENU」ボタンを押してジョグダイヤルで CD-MD REC を選択して「ENTER」ボタンを押すと、これまた同様に TOC W ERR が表示され、その先に進めません。 ちなみにMDの爪を録音禁止にして同様のテストを行うと、本来なら PROTECTED と表示されるはずの所が、相変わらず TOC W ERR が表示されます。ともかく、MDのTOCに変更を加える操作を行おうとすると、この TOC W ERR が表示されるようです。 MDのピックアップが弱って来たりすると、録音や編集動作を終了した後で、TOCへの書き込みエラーが表示されることはありますが、録音動作の前にエラー表示が出ることはありません。今回の場合には、操作する前に書き込みエラーが表示されてしまいます。こんな状況では録音は一切不可能です。 本機のマニュアルは、SHARPのホームページにはもう掲載されていませんでしたので、似たような機種(MD-F150)の取扱説明書をダウンロードして、このエラーの意味を調べてみましたが、残念ながらマニュアルには記載がありませんでした。しかし、ホームページのお問合せのページに掲載がありました。 さて、その意味ですが、 TOC W ERR は、「自己診断機能により異常と判断した。修理を依頼してください。」というものでした。MDを挿入した時、TOCから曲数などのデータを読み取ると同時に、MDメカの録音機能が正常に動作するかどうか予めチェックされているようです。その結果がエラーとなったので以降の録音関係の操作は一切出来ないということのようです。 果たしてこの不具合は分解する前からあったのか、分解したことによって出るようになったのかどちらでしょうか。分解する前にMDの録音確認をしていなかったことが大いに悔やまれます。 CDは調子良いし、カセットも問題無し、MDの再生も良好、なのにMDの録音が出来ない。なんとも中途半端な状況です。ホームページにあるようにメーカー修理に出さないと直らないものなんでしょうか?
家電製品といえどもそうそう簡単に壊れるものではありません。ましてや回路不良になるようなことは、特別な事でもしない限り、滅多に起こりません。もう一度、MDメカを分解して清掃のチェックを行うことにしました。 うまい具合にMDメカから伸びているフラットケーブルをMDの挿入口から内部基板に接続することが出来ましたので、通電しながらの確認も容易に出来ます。先の清掃時点では取り外さなかった制御基板も取り外して、再度分解して、もう一度清掃を行って見ました。 結果は上々です。MDを挿入しTOCが読み取られて曲数と演奏時間が表示されたことを確認した後、「TOC EDIT」ボタンを押して見ると、 TOC W ERR に変って、 DISC NAME とディスクのタイトルを入力するメニューが正常に表示されました。原因は不明ですが再度の分解清掃で直ったようです。この後、CDからMDへの録音テストもして見ましたがすべて良好でした。 以上で修理完了です。このラジカセは正常な完動品となりました。 |