KENWOOD カセットデッキ KX-1100Gの修理 2017.9.24


    ■「KX-1100G」というデッキ

    外観綺麗なジャンクのKX-1100G、KENWOODの名機です。

     いつも立ち寄るハードオフのジャンクコーナーで見つけたKENWOODのカセットデッキ「KX−1100G」です。

     このデッキの詳細については、オーディオの足跡さんのこちらのページと、オーディオ懐古録さんのこちらのページに説明があります。

     外観は綺麗で、4,500円と不動のジャンクにしては高いですが、発売当時、99,800円もしたKENWOODの名機です。これは買いです。簡単に直れば儲けものです。


    ■「KX-1100G」の修理

     症状の確認です。電源を入れるとディスプレーやレベルメータが点灯しました。しかし、何か表示が変です。カウンターの値が表示されていません。こんなものかも知れないと気にせずに、ツマミ類を確認します。

     再生ボタンや早送り、巻き戻しのボタンを押しますが何も反応はありません。カセットトレイから見えるキャプスタン軸は電源が入ると同時に回転しています。

     ネットでこのデッキの修理記事をググってみると、アシストモータの回転軸の固着が起こるようなことが書かれていましたので、同様な症状が無いか確認しましたら、同じ症状です。モータの線間抵抗を調べると断線状態でしたが、3.3Vの電圧を掛けて手で回してやるとその後はずっと回転をしています。線間抵抗も100オーム程度となりましたのでアシストモータの修理は終わりです。

     デッキメカを取り外したついでに、リール廻りを点検してみると、送り出しリール側のテンションベルトが溶けて切れてしまっていました。リールに巻き付いたベルトを取り外し、新しいベルトを取り付けました。

     デッキメカ廻りの点検を終えメカを元に戻して見ましたが、相変わらず操作ボタンを押しても何の反応もありません。


    電源は入るがボタンを押しても何の反応もない。ディスプレーの表示も中途半端。 前後のキャプスタンは電源を入れると回転する。ダイレクトモーターは正常だ。 上カバーを開けて見た。基板一枚とデッキメカのシンプルな構成。


    SANKYO製のデッキメカ。左がアシストモータ、中央がリールモータ。ダイレクトモータは左下奥にある。
    デッキメカを取り外す。
    このデッキは、アシストモーターの不良が起こるらしいとの情報を基にモーターを調べて見る。


    線間抵抗を図ると断線状態。3.3VのDCアダプターを繋ぎ、手で回すと回転を始めた。暫くモーターを回転させておく。 送り出しリールのテンションベルトが切れてしまっていた。 ベルトが溶けて切れ、リールに巻き付いている。溶けたベルトを外し清掃をしておく。

     テープカウンタの表示が出ていないことからマイコン回路の不良を疑い、マイコンの電源電圧を測って見ましたら、+5Vの端子が0Vでした。これでは、マイコンが動きません。

     基板を調べて見ると、+5Vのレギュレータ回路の出力がありません。更に調べて見るとレギュレータ出力部分の電解コンデンサがショート不良を起こしてました。

     不良品の電解コンデンサを手持ちの同容量品に交換するとマイコンが動きだし、ボタン操作でテープの回転が出来るようになりました。テープカウンタの表示も出るようになりました。

     走行系が正常になりましたので再生確認を行いますと、レベルメータは全然振れず、ヘッドフォン端子からも何も音が出ません。どうやらアンプ回路の不良のようです。

     このデッキでは、オペアンプが多用されています。8pinディップのオペアンプです。4番pinと8番pinの電圧を測ってみると正負電源のどちらも電圧がありません。

     調べて見ると、正負電源レギュレータの出力部分の電解コンデンサ(470uF/10V)がショートしていました。この電解コンデンサを交換しても、正負ともに相変わらず出力されません。

     さらに調べて見ると、正電源についてはトランジスタが導通不良、負電源については別の電解コンデンサがこれまたショートしていました。いずれも、耐圧10Vのコンデンサです。8V程の回路に10Vでは耐圧が低すぎます。

     電解コンデンサとトランジスタを交換しましたら正負電源が正常となり、テープの再生音が出てくるようになりました。

     手持ちの録音済みのテープを再生してみた所、再生途中でリールが回転しなくなり、早送り、巻き戻しも出来ません。ボタンを何度も押していると直りますが、また暫くすると停止してしまいます。リールモーターの不良です。

     以前にも別のデッキでこのような症状がありました。その時は、モータを分解しブラシ部分を清掃することで直った経験があります。今回もリールモータを分解しブラシとモータ軸のブラシの当たる部分を清掃することで症状はなくなりました。

     これで再生は正常に行えるようになったのですが、録音テストを行うと、全然録音が出来ません。3ヘッド機ですので録音時には、モニターをヘッド側に切り替えておけば結果は直ぐに分かります。録音中なのに、以前に録音している音が消去されずに再生されます。

     消去ヘッドには、BIAS発振回路の出力の一部が供給されてテープを消去するようになっています。消去もされていないということは、BIAS発振回路の発振停止が疑われます。ということで、BIAS発振回路を調べて見ましたら、これまた電解コンデンサの不良が見つかりました。

     47uF/25Vのコンデンサです。ここの回路は、+10.5Vと-10.5Vの21Vが加わる所です。ここに耐圧25V品では、不良となっても不思議では無いです。47uF/35V品に交換しました。

     以上で、目に見えている症状に対する修理は完了です。録音、再生、400Hz、10KHzの録音キャリブレーションも正常に出来ています。

     今回のデッキは、経年により電解コンデンサが劣化したことが主な故障原因でしたが、これは、使用している電解コンデンサの耐圧が低いのがそもそもの原因のような気がします。目に見えないコンデンサの劣化が他にも起こっている可能正は否定出来ません。やはり、電解コンデンサは全数交換した方が良いのかも知れません。


    手持ちの20mmφのベルトを取り付けておいた。 アシストモーターは正常になったはずだが、相変わらずボタンを押しても何も反応なし。カウンタ表示が出ていないのでマイコン不良かも? 基板を調べるとマイコンへの+5Vの電圧が出ていない。回路を追いかけてみたら、+5Vのレギュレータ回路の電解コンデンサがショートしていた。手持ちのコンデンサに交換する。


    マイコンが動くようになりカウント表示が出て、ボタンを押すとカセットが廻るようになった。しかし、音が全くでない。 アンプ回路の電源レギュレータ部の電解コンデンサとトランジスタが不良であった。手持ち部品に交換したら音が出るようになった。 PLAYの途中で巻き取りリールが停止することが度々発生。リールモータの分解清掃を行うことにする。


    モータ基板を外し、電極のついたカバーを外して、ブラシとブラシの接する部分を清掃しておく。 これで早送り、巻き戻し、再生は正常になったが、なぜか録音が出来ない。調べたら、こちらも録音バイアス発振回路の電解コンデンサ不良であった。コンデンサ交換で治る。 不良部品。10V470uFx2, 10V100uFx2, 25V47uFx1, 2SC1740,コンデンサは全て内部ショート。トランジスタは、CE間導通無し。