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手に入れたレトロオーディオ チューナー SONY ST-5150D カセットデッキ SONY TC-K65 アンプ TRIO KA-7300 全て過去に一度手にしたことがあるもの |
30年前のレトロなオーディオ機器に特に興味がある訳ではないが、自分がその当時に使っていた機種と同じ機種がヤフーオークションに出品されるとなんだか懐かしくて欲しくなり、何台か手に入れてしまった。その一台が、これTRIOのプリメインアンプKA-7300だ。
■KA-7300との出合い
30年以上前のこと。今の会社に入社したての頃のことだ。寮の先輩からPIONEERのレシーバーアンプ「SX-414」を譲り受けFMを楽しんでいたのだが、丁度この「SX-414」に飽きてきた頃、TRIOから左右独立2電源搭載のアンプKA-7300が発売された。
カタログに記載されたダイナミッククローストーク理論の話や32接点アッテネーターボリュームにすっかりと嵌ってしまいKA-7300を購入することになる。その後、10年程使ったが1988年に自宅を新築した際に惜しげも無く廃棄してしまった。
今回は、通電確認のみのジャンク品を購入。ジャンク品かつ3,000円という出品価格により誰とも競り合わずに落札できた。20数年ぶりのKA-7300との再会である。
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30年間保存していた取扱説明書と製品カタログ 当時、このカタログを見てKA-7300が欲しくなり購入することになった |
■KA-7300の修理
30数年前のアンプであり、かつジャンク品なだけに正常であるはずが無い。故障状況、原因、修理の概要は以下のとおり。
故障状況
- 電源が入ったり入らなかったりする。一旦通電すると切れないが、一度切った後で再度入れようとするとほとんど入らない。
- 左右ともガリ音が出たり、全く音が出ないことがある。
原 因
- 電源スィッチの接点が焼損。電源スィッチは、3Pスィッチだったので、健全なもう一方の端子に配線替えを行う。
- 信号経路上にあるボリュームやトーン切替スィッチの接点接触不良。全て分解して接点を清掃する。
その他
- 保存状態の悪さから内部に埃とゴミが堆積していた。分解して清掃。
- 電源平滑回路のコンデンサの液漏れが発生していた。全数の電解コンデンサを新品に交換。トランジスタに関しては交換せず。
■修理レポート
出品者からアンプが届き、早速にテストを開始する。外観チェックでは、スィッチ類の外れなど不足品は無い。前面のアルミ操作パネルやアルミのつまみ類に目立つ傷や汚れは無い。30数年を経た割りには良好なものと言える。流石にバックパネルは埃で汚れており、RCA端子にも錆びが目立つ。取り付けビスに錆びが見られないのは幸いだ。
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大きな傷や汚れも無く良品に見えるが.... |
トップカバーを開けてびっくり。カビ臭い匂いもする |
バックパネルも埃で汚れている |
内部はご覧のとおり。このまま通電するのは恐いくらいだ |
AUX端子にMDデッキを接続し、ヘッドフォン端子にヘッドフォンを接続して簡単な試聴テストを行って見る。
正面左にある電源スィッチを操作してみると、電源が入ったり入らなかったりする。一旦通電すると切れないが、一度切った後で再度入れようとするとほとんど入らない。電源スィッチの不良か、電源基板の不良か?基板不良であるとやっかいだ。
通電出来たタイミングでMDの再生音を確認して見る。ボリュームを恐る恐る上げて行く。何しろ30数年前のものだけにいきなりボリュームを廻すと何が起こるか判らない。右側からは音が聞こえるが左側から音が聞こえない。
一応右側から音が出ただけでも一安心だ。致命的な不具合はないことの証だ。バランス調整のボリュームを左右に廻して見るが症状は変らない。トーン切替スィッチを操作すると左側の音が聴こえる時がある。ガリ音も聴こえる。信号経路上にあるボリュームやトーン切替スィッチの接点接触不良のようだ。全て分解して接点を清掃すれば回復するものと思われる。アンプの増幅回路そのものに故障はなさそうだ。
試聴テストはここまでにして、内部の点検を開始する。トップカバーを開けてびっくり。屋外にでも保存してあったのかと思う程の埃が堆積している。鼻を近づけて見るとカビ臭い匂いがする。湿気で埃がこびりつくとともカビが発生しているようだ。
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左側メインアンプ基板 |
スピーカー端子付近 |
電源基板。スピーカーリレーが見える |
PHONOイコライザアンプと入力ソース切替基板 |
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トーンコントロール基板 |
メインボリューム |
フィルター基板 |
すべて分解して清掃を行うとともに、全数の電解コンデンサを新品に交換した。基板類は、全て洗浄スプレーで洗っておいた。トランジスタに関しては問題が無さそうなので今回は一切交換していない。交換するとなると調達が大変だ。
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前面アルミパネルを外す。内部の鉄板に錆びは無い |
鉄板を外す。 左にトーンコントロール、 右にフィルター 基板上の電解コンデンサを全て交換、スイッチは分解して清掃 |
スピーカー切替スィッチ 奥に見えるのは電源スイッチ 電源スィッチも分解して清掃、配線変えを行う |
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シャシー裏側 電源平滑用電解コンデンサー付近 |
シャシー裏側 電源トランス付近 |
電源平滑用電解コンデンサーは液漏れ発生 新品と交換する |
清掃したメインアンプ基板 この後電解コンデンサを交換 |
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交換した電解コンデンサ 一般:37個、無極性:3個 オーディオ:17個の計57個を交換 |
交換した電源平滑コンデンサ、10,000uFの大容量 |
修理後の様子を次に示す。
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操作パネルは見た目変化なし |
(前側) 内部の様子。すっかり綺麗になった (後側) |
バックパネル。端子類も綺麗になった |
■調 整
スピーカー端子に固定抵抗を接続してDC電圧の漏れを測定したところ、左側が+60mV、右側が+22mVであった。流石に60mVとなると、左側のスピーカーから接続・切断時に「ボコッ」という小さな音がする。調整が必要だ。
ところがこのアンプ、写真を見て判るように最終段は、パワートランジスタのハイブリッド回路が金属ケースに納まった密封構造となっており、基板側にもバイアス電流やDCバランスを調整する半固定抵抗がない。
ひょっとして金属ケースの中に半固定抵抗が組み込まれているのかも知れないがこれ以上手の施し様が無い。
DC漏れは、スピーカーに取って良くない事ではあるが、どうにも手の施しようが無い。電解コンデンサ以外に基板上のトランジスタや固定抵抗などを交換すれば直るのかも知れないが、現在手付かず状態だ。スピーカーには悪いと知りながらも、このアンプの音が気に入り、毎日聴きいってしまっている。