ONKYO MD/CDミニコンポ FR-7GXの修理 2010.03.01

     ここ暫くは、カセットデッキのゴムベルト交換やメカの分解・清掃など、メカ系の修理ばかりであったが、今回久しぶりに電子機器らしい故障の修理を楽しむことが出来た。

     神戸市垂水区に新しくハードオフ店が出店。休日の暇つぶしにジャンク品探しに出かけてみた。新規オープンの店ながら品揃えは良さそうだ。アンプにスピーカー、ミニコンポにカセットデッキ、それなりの数のジャンクが並んでいる。

    美品だが出力不良のジャンク

     値札に書かれたメモのような動作チェック結果を参考に面白い物はないか店内を探して回る。 故障の状況から見て総じて値段が高いような気がする。ONKYOやSANSUIのアンプなど音が出たというだけで 外観ボロボロでも結構な値付けがしてある。ネットオークションの落札価格を参考に値付けしているのかもしれない。

     そんな中、ONKYOのミニコンポFR-7GXを見つける。傷も汚れも無い美品だ。値札に書かれた症状は、「CD,MD再生しましたが、かなりノイジーです」とあった。多分、ザーという雑音が出力されるのだろう。コンポ内部のメインアンプの故障かもしれない。値段は、税込み2,100円。アンプのパワートランジスタでも壊れていたら修理は大変だ。この症状でこの値段、高いような気もしたが美品に惹かれて購入してしまった。

     自宅に持ち帰り動作確認を行う。CDのトレイ開閉、CDの認識・選局、MDの認識・選局、問題なく動作する。 FMの自動プリセットも問題無く動作した。ところが、スピーカーから聴こえる音は、ザ・ザザ・ザーという ノイズ音ばかり。そのノイズに隠れて微かにCDやMDの再生音が聴こえる。見た目の外観に反して修理出来なければ完全なゴミと化す代物だ。 なんとしても原因を突き詰めて修理しなければ2,000円がパーだ。メインアンプ不良か、それとも内部回路不良か。AD/DAなどの故障であれば修理は不可能。まずは切り分けが必要だ。

     背面のLINE入力に400Hzのテスト信号を加え、ボリュームの入力側の信号波形をオシロスコープで観測して見た。すると正弦波の下半分が潰れてしまっていた。TAPE-OUTを確認するとこちらも同様に正弦波の負の部分が潰れていた。CDやMDの再生では、複雑な波形の音楽信号の負の部分が潰れてしまうのだからノイズ音が聴こえて当然だ。ボリュームの入力側で波形が潰れているのだからメインアンプは正常だ。プリアンプ部分の故障と考えられる。


    ケースカバーを開ける
     FRシリーズの特徴ある部品配置はこの機種も同じ
    問題のプリアンプ基板
    構成部品が少ない。左隅の電解コンデンサが不良であった。

     分解してプリアンプ基板を眺めて見る。OPアンプが多用されており部品点数も少なくすっきりとした基板だ。基板中央に3端子レギュレータが2個あった。レギュレータの型番は、7812と7912。±12Vを生成している。OPアンプに供給する±電源だろう。外観上不具合らしき箇所は一切見当たらない。

     基板をもう一度組み戻して動作確認を再度行う。OPアンプの電源端子で+電源側を測定すると+6.5V、−電源側は -0.6V であった。マイナス電圧が明らかにおかしい。3端子レギュレータは、±12V出力であるので、OPアンプの電源端子にも±12V が加わっていると思ったのだが、どこかで電圧を落として±6.5V を加える仕様になっているようだ。

     3端子レギュレータの入出力電圧を測定すると、7812は、+16V入力で+12Vの出力、7912は、-14V入力で-12V出力と正常であった。もう一度、基板を眺めて見ると、7812、7912の出力側にゼナーダイオードが接続されていた。どうやら、ゼナーダイオードで電圧を6.5Vに落としているようだ。3端子レギュレータ周りの回路は次のようであった。

     -6.5V であるべき電圧が -0.6Vになっていることから、ゼナーダイオードの不良を疑う。ゼナーダイオードを取り外し、代わりに300Ωの抵抗を接続し電圧確認を行って見た。330Ωと300Ωの抵抗分圧で6Vぐらいの電圧が測定されるはずの所、やはり-0.6Vとなる。ゼナーダイオードの不良ではなく、負荷側のOPアンプ内部の回路不良が疑われる。

     基板のパターンを追いかけて、負荷側のOPアンプを一つずつ外して電圧が変化するか確認を行う。-6.5Vの電圧が供給されるOPアンプを切り離しても電圧が回復しない。負荷側に残っているのはアナログ信号セレクターのICだ。こちらへの供給を切り離すと、ゼナーダイオードの出力電圧が、-6.5Vになった。不良原因は、アナログセレクターである。


    7812/7912の3端子レギュレータ付近
    問題のコンデンサの裏側にはICがある
    入力切替のセレクターICだ。

     セレクター付近を眺めて見ると、ICの電源電圧安定のために220uFの電解コンデンサが取り付けてあった。セレクターICの故障かもしれないが、ひょっとするとこの電解コンデンサの不良かも知れないことに思い至る。試しに電解コンデンサを取り外して、セレクターへ電圧をかけて見ると、ゼナーダイオードの出力電圧は-6.5Vと正常になった。再度コンデンサを付け直すと-0.6Vになる。ICの故障ではなく電解コンデンサの不良だ。

     電解コンデンサの故障は、一般的には電解液のドライアップによるオープンだが、稀にショートモードの故障も発生する。FR-7GXは2005年製であるから経年により起こるドライアップはまず考えられない。取り外して端子間の抵抗を測定すると2.4Ωであった。予想どおりにショート故障であった。

     取り外した電解コンデンサは、16V220uF であったが、手持ちに同仕様のものがなく、耐圧が一クラス上の25V220uFを代わりに取り付けた。基板を組み戻して動作確認を行う。CDを再生するとスピーカーからは、ノイズの無い綺麗な音が再生された。修理完了である。


    不良のコンデンサを交換する
    見た目は不揃いだが問題無い