ONKYO DVD/CDプレーヤー DV-S155の修理 2011.02.10

     久しぶりにハードオフに出向く。面白いジャンク品はないかと店内を探して回る。20年も前のアンプやデッキは古くて汚れが目立つ。こんなジャンクは修理の前の清掃が大変なので今日はパス。比較的新しくて綺麗なものを探し、見つけたジャンクが二つ。

    「DMD-F101」MDが読めない。

     一つ目は、DENONのMDデッキ「DMD-F101」。DENONの ハイコンポ[ef]シリーズのMDデッキだ。この[ef]シリーズのレシーバアンプ「DRA-F101」を今までに2度修理したことがあるが、[ef]シリーズを構成するコンポは、なかなかにデザインもよく、おしゃれである。 1度目の修理記録2度目の修理記録

     二つ目は、ONKYOのDVD/CDプレーヤー「DV-S155」。ONKYOのINTEC155シリーズのDVD/CDプレーヤーだ。こちらもコンパクトながらデザインにも優れ、おしゃれなプレーヤーの一つではないかと思う。

     さて、ジャンクの理由だが、店の説明によるとDMD-F101は、「TOCエラーでディスクがイジェクトされる」DV-S155は、「電源不可(電源入らず)」ということであった。

    「DV-S155」こちらは電源が入らない。

     DMD-F101の不良は、ピックアップメカのメカ的な不具合なら修理も可能だが、ピックアップの劣化が原因であれば修理は困難だ。何千円もするピックアップを購入して交換すれば治せるのだがジャンクにそこまで投資するつもりはない。ここは博打を打つつもりで購入する。値段は税込み1,050円。修理が駄目なら内部の電源回路やケースは電子工作に流用すればよい。ケースデザインが良いだけに十分に元は取れるというものだ。

     一方のDV-S155だが、電源不可なので電源回路不良かマイコンの不良と思われる。マイコン不良ならお手上げだが、その他の原因ならなんとかなりそうだ。ただし、電源が活きてもDVDやCDが読めるかどうかは不明だ。購入するならこれまた博打である。とはいえ、こちらもお値段は1,050円。わずかな投資でちょっと面白い修理が楽しめるわけで迷わず購入する。


    ■ DMD-F101の修理 .....修理不可

     家に持ち帰りサクっと動作確認を行う。ディスプレー表示などは問題ないが、MDディスクを差し込むと中から2度ほどガチャガチャという音がして暫くすると「TOC Err R」の表示が出て、おもむろにディスクが吐き出される。  早速にカバーを開け、ピックアップメカを分解し、中の様子が見える状態にして再度動作確認を行う。

     色々と試した結果、不具合は予想どおりにピックアップ不良であった。レーザー発光のきざしすら見えない。修理は諦め元に戻す。このデッキのケースを使った面白い電子工作を思い付くまでお蔵入りとした。


    ■ DV-S155の修理 .....修理完了

    1. 動作確認 .... やはり電源は入らない

     次にDV-S155の動作確認を行う。電源ケーブルを電源コンセントに差し込み通電すると前面のスタンバイランプが赤く点灯した。次に電源ボタンを押してみると一瞬ランプが消灯するがまた点灯する。このプレーヤーは電源が入るとランプが消灯する仕様なので間違いなく電源が入らないといえる。何度繰り返しても同じで、ディスプレーには何も表示されない。

     プレイボタンを押すと同様の症状を示す。他のボタンは押してもランプの変化は無い。プレイボタンは電源ボタンを兼ねているのでこのようになる。ボタンの操作はマイコンが検出しているのでここまでの動作確認でマイコンが死んでいないことは判った。ひとまず安心だ。

     最近のオーディオ機器にはマイコンが搭載されており、ボタンの操作などはマイコンが常に監視している。このプレーヤーでは、電源ボタンが押されたことを検出するとマイコンは、スタンバイランプを消灯し、電源投入処理、搭載機器のセルフチェックと順番に実施するはずだ。症状から見るに、電源が入った直後にマイコンが何か不具合を検出し安全のために電源を切っているかのように見える。


    2. 電源ユニットの調査 .... コンデンサの他には問題なし

    1000uFの電解コンデンサ2本の頭が膨張。容量抜けは確実だ。交換が必要。

     早速にケースカバーを開ける。ケース後方に電源ユニットが搭載されている。ユニット上の2本の電解コンデンサの頭が膨張しているのが見て取れる。コンデンサにはメーカー名がjamiconと書かれている。台湾か中国のメーカと思われる。

     2001年から2002年にかけて台湾で製造された、PCのマザーボードに搭載する低ESRの電解コンデンサが電解液不良で短時間で駄目になるという騒ぎが数年前にあったが、このプレーヤーもその時期の製造だけに同じ問題を抱えていたのかも知れない。

     コンデンサの仕様は、10V1000uF。電源の整流平滑用コンデンサだ。この電解コンデンサはいずれ交換することにして、先に不具合動作の原因調査を開始する。まずは回路を切り離し電源ユニット単体で調査を行う。電源ユニットのケーブル端子は次のようになっていた。


    端子番号端子名用途(推測)
    1,3,5,9
    GND
     
    2
    +3.3V(3.3V)
    プレーヤー部の電子回路電源
    4
    SW+5V(5.0V)
    プレーヤー部の電子回路電源
    6
    V+12V(11.8V)
    プレーヤーメカ部のモーター電源?
    7
    MGND
    メカ部の専用グランド?
    8
    M+6V(5.8V)
    プレーヤーメカ部のモーター電源?
    10
    E+5V(5.02V)
    マイコン用電源
    11
    P-ON
    マイコンからの電源出力制御(5Vを引加すると+3.3V、SW+5V、
    V+12Vが出力。GNDで出力停止)
    12
    FLAC2(-19.9V)
    ディスプレーのフィラメント電圧
    13
    FLAC1(-22.3V)
    ディスプレーのフィラメント電圧
    14
    -27V(-27.1V)
    ディスプレーのプレート電圧
    ※ 端子名の()内はテスターで測定した電圧値
    電源ユニットを調べる。回路上の不具合はない。

     P-ON端子とE+5V端子を1kΩの抵抗で接続し、+3.3VやSW+5Vを出力させてそれぞれの電圧をテスターで測定してみたが特に異常は見当たらない。 電源ユニットに特に回路上の不具合は発生していなさそうだ。ちなみに回路を追いかけて見ると次のようであった。

     ユニット中央のトランスの2次側にある複数の巻線の一つから交流出力をダイオードで整流し、平滑用の電源コンデンサを通して メカ用のM+6Vが作られていた。もう一つの巻線からは、+3.3Vの元になる4Vの電圧が同じような回路で作られていた。 この2つの平滑用電解コンデンサの頭が膨れているのだ。

     メカ用のM+6Vの電源からは、さらにダイオードで電圧をシャントしマイコン用のE+5Vが作られ、また4端子の電源レギュレータICを 通してSW+5Vが作られていた。4端子の出力制御端子は、P-ONに接続され、マイコンで出力制御されていた。 +3.3Vも同様に4端子レギュレータICを通して4Vから生成されていた。もちろん、こちらも出力制御端子はP-ONに繋がりマイコンで制御されている。 V+12Vや、-27Vなどは、別の巻線からディスクリート回路で作られていた。


    3. マイコン基盤の調査 .... 別電源で動作良好

    操作パネルの裏側にあるマイコン。マイコン基板単体の動作テストは良好。

     前面操作パネルの裏側にはディスプレーを取り付けた基盤がある。そこにはディスプレーのコントローラーを兼ねたマイコンが搭載されている。 この基盤と本体基盤を接続しているフラットケーブルを切り離し、マイコン基盤単体で動作確認を行う。 フラットケーブルで供給される本体からのGNDと+5Vの代わりに、実験用の電源回路からGNDと5Vを加える。

     実験用の電源回路のスイッチを入れるとスタンバイランプが赤く点灯した。ここで電源ボタンを押すとスタンバイランプは 消灯したままとなった。マイコン基盤のP-ON端子は、0Vから5Vに変化した。マイコンが電源ユニットの+3.3VやSW+5Vを出力しようと 制御したことが確認された。ディスプレーは、-27Vなどの電源が接続されていないので何も表示されないが、こちらの基盤も 特に問題がないことがわかった。

    4. さて原因は? .... 電圧ドロップでマイコンがリセット

     ここまでの調査でふと思いついた。以前に KENWOODのミニコンポSE-7MDの修理をしたが、SE-7MDのCDプレーヤーである「DP-SE7」の不具合は、電源回路の電解コンデンサの容量低下により 演奏途中でマイコンがリセットして電源が切れてしまうというものであった。今回の不具合も正にこれと同じ症状だ。

     先の調査で、マイコンの電源E+5Vは、SW+5Vの元の電源M+6Vから作られていることが判っている。電源ボタンが押されるとマイコンは、 P-ON端子にオンを出力(+5Vを引加)し、SW+5Vや+3.3Vを出力する。SW+5VがDVDプレーヤーの電子回路に供給された瞬間、インラッシュにより 電圧が一瞬低下するとマイコンがリセットして電源が切れた初期の状態に戻ってしまうのだ。

     もちろん、このようなことが起こら無いように大容量の電解コンデンサでインラッシュによる電圧低下を防止しているのだが、 電解コンデンサの劣化が進み、徐々に容量が低下してくると、ある日突然にこのような状態に陥るということだ。

     手元に6.3V2200uFの電解コンデンサがあったので、試しに劣化した2本の電解コンデンサをこちらに交換して動作確認してみたら、 何の問題もなく電源が入り、DVDディスクやCDディスクをすんなりと読み込み再生してくれた。ピックアップの劣化よりも先に電解コンデンサ が劣化したものと思われる。早速に10V1000uFの電解コンデンサ2本を購入し交換した。


    電解コンデンサを交換。マイコンがリセットせず電源が入るようになった。 CDを再生してみる。認識も早く軽快に動作する。 コンパクトでおしゃれなプレーヤーだ。良いものが安く手に入った。


     修理完了後ネットでDV-S155の修理記録を検索してみたら同様の電解コンデンサ不良の 記録がたくさん見つかった。製造コストを切り詰めた結果だと思うが、最近のオーディオ装置の 寿命なんて数年あれば良いということなのだろうか。