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Nakamichi DRAGON |
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Nakamichi(ナカミチ)の名機 DRAGONを、ヤフーオークションで入手した。勿論難有り品だ。
DRAGON ともなると競り合いは必至で結構な値段での落札となった。それでもありがたいことに
難有りということで、同時期に別の出品者が出品していた完動品の落札価格に比べると
3万円近くも安く落札できた。
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出品案内の説明は、次のとおり。
・本体、元箱、取り説付き
・難は録音すると音が歪みうまく録音出来ません。
・再生は問題なく動作しています。
・この様な状態ですので修理・調整の出来る方、部品取り等にいかがでしょうか?
・中古品ですのでそれなりに使用感と擦り傷はあります。
ま、お決まりの出品案内である。開始価格20,000円のDRAGONを部品取りにするなんてこともなく、修理して使うのが本筋というものであろう。
DRAGONは、再生ヘッドの自動アジマス調整機構を備えており再生デッキとしての性能は高い。
さらにオートリバースだから使い勝手も良い。録音が駄目でも再生が出来れば問題はない。
欲を言えば、録音もまともであって欲しいのだが、録音は、これまたAIWAの名機 XK-S7000 が手元にあるので問題はない。
届いたDRAGONだが、保存状態が良かったのか外観はすこぶる良い。梱包されていた元箱も傷みも少なく感心するほどだ。
ジャンク品の修理では、修理に先立って必ず分解して清掃を行うのだが今回はまったく不要だ。
ケースの底面を見てみたら、Nakamichiの小さな修理シールが貼られていた。
日付を確認すると92年2月と書かれている。20年前に一度修理されているようだ。ならばそんなに不具合もないはず。
動作確認をざっと行って見る。
DRAGONは、マニュアルでテープ毎に精確な録音調整ができる。このため調整用のつまみやスィッチが操作パネルに
ズラリと並ぶ。添付されてきたマニュアル(コピーではなく原本だ)を片手に、まずは再生テストから始めてみた。
ヘッドフォンをつなぎ録音済みテープを再生して見る。NAAC(アジマス調整機構)が動きだしたのが、カセットホルダーの
ランプの点滅で判る。暫くすると、デッキ内部から、カタ、カタという異音がしだした。これが一向に止まらない。ランプ表示は
点滅から点灯に変っており、NAACによるアジマス調整は既に終わっているはず。何かおかしい。
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つまみとスイッチがマニア心をくすぐる |
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肝心の再生音だが、こちらも音が変だ。ステレオの中心に定位するはずの音が抜けて残響音だけの何か
エコーがかかったような音がする。数分の間、このような音が聴こえていたが、一度電源を切って、
再度電源を入れると正常な音が聴こえるようになった。カタカタという異音は相変わらず聴こえる。
電源の入り切りを何度か繰り返し、再生、早送り、巻き戻しなどを一通り行ってみたら、その後、再生音が
おかしくなるようなこともなく、カタカタという異音も聴こえなくなった。試しにリバース動作を行ってみたら、
リバースしてすぐに音が変になり、慌ててストップしてテープを取り出してみたら、テープがグシャグシャになっていた。
巻き込みを起こしたようだ。メカの調整がいるのだろうか。
また、早送り状態でキューイングボタンを押すと、聴こえるはずのキュルキュルという再生音が聴こえてこない。
ヘッド部分を少し押し上げてやると音が聴こえる。テープとの接触が不十分のようだ。
再生動作の確認の後、続けて録音動作の確認に取り掛かる。録音キャリブレーションをマニュアルに従って行って見る。
400Hzによるレベル設定、15KHzによるバイアス調整は問題なく行えた。ところが、キャリブレーションを終了させる「Reset」ボタンが
全く反応しない。Resetボタンでキャリブレーションが終了し、テープが巻き戻るはずだが、何も反応が無いので「Stop」
ボタンでキャリブレーションを強制終了させる。内部のタクトスィッチの接触不良だろう。操作パネル部分の分解・修理が必要だ。
CDからの録音テストを行って見る。DRAGONは勿論3ヘッドなので、ソース音と再生音を切り替えてモニターできる。
噂に違わず、このデッキ、ソース音と再生音の区別がまったくつかない。正にDRAGONの面目躍如という感じ。出品案内に
あった録音不調など何も無い。
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多数のケーブルが使われている |
手前の黒いBOXがNAAC |
前面パネルを取り外した |
数日後に、操作パネルを外し、Resetボタンの接触不良を修理した。今の所、その他に修理すべき箇所はない。
デッキ到着直後のテストで発生した再生音の異常だが、原因はヘッドとテープの接触不良であったように思われる。
アジマス調整のカタカタという音も、まれに発生することがあるが今はほとんど聴こえなくなった。
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この「Reset」ボタンが反応しない |
操作パネル裏にも多数のケーブルが走る |
ボタンの導通をテスターで確認 |
このデッキ、使われることもなく長期間放置されていたためにメカの摺動部分が鈍くなっていたものと思われる。
それによる影響が一時的な再生音異常であったり、リバース動作時のテープの巻き込みであり、キューイング時の
無音であった。現在は、特に問題もなく動作している。
肝心の音質だが、設計製造された1982年のその時代を反映した厚みのある艶やかな音がする。
私感であるが、カセットデッキの再生音は、CDが出現するまでは、厚みのある艶やかな、ある意味賑やかな味付けが
なされていたように思う。その後、CDの音質に近くなり、薄っぺらい味気無い音になっていった。
これは意図されたことなのか、それとも技術の進展とコストダウンにより、それまでのトランジスタのディスクリート
構成から高集積のICへと、回路構成や部品が変ったことによる必然的な音の変化なのか、なかなかに興味ある所である。