KENWOOD MDデッキ DM-SE7の修理 2006.01.08

     「DM-SE7」は、KENWOODが1997年に発売したシステムコンポAVINOシリーズの「SE-7MD」を構成するMDデッキです。これもヤフオクで手に入れました。

     正常動作品ということでしたので、簡単な動作確認をして見ました。手持ちのMDをディスク挿入口にそっと押し込みます。オートローディング機構によりMDが中に取り込まれ、ディスプレィには「READING」の表示が点滅しています。じっと見ているとこの「READING」の点滅表示が長く続いた後、やっとの思いで「001 0:00」とMDを認識した表示が出ます。どうやらピックアップが弱って来ているようです。この後、プレイボタンを押すと再生は正常に行われます。選曲操作も問題ありません。

     この後、録音のテストも行って見ました。こちらも特に問題なく終わりました。こうして暫くの間使っていたのですが、MDの認識に時間がかかる点だけは相変わらずでイライラさせられました。そうこうしている内に、MDを認識するどころか「BLANK DISC」と表示したり認識出来ずにイジェクトしたりするようになりました。

     ケースを空けMDのメカユニットを分解してピックアップのレンズ清掃を行ってみましたが結果は改善されません。数回に一度ぐらいは認識することもありますが、ほとんどMDを認識しません。次にレーザー出力調整を行ってみましたが、こちらも効果はありませんでした。

     色々とピックアップを弄くっている時です、メカユニットをふと傾けた時、嘘のようにMDの認識がスムーズに行きます。何度試しても同じです。水平に設置すると認識しないのですが、30度程度に前後左右いずれかの方向に傾けてやるとすんなりと認識します。傾けたままプレイボタンを押すと正常に再生しますが、再生途中に水平に戻すと、とたんに音飛びしたり再生が停止したりします。傾けたままだと、再生も録音も何の問題もなく出来ます。まったくもって不思議なことです。

     この奇妙な現象を解明すべく、メカユニットを徹底的に分解し色々な角度から調査しましたが、いまだもって原因は判りません。ピックアップそのものに原因があるようにしか思えません。ただ、MDのピックアップの原理・構造からしてこのような現象が説明できるとも思われませんので全くもって不思議としか言いようがありません(当方の知識不足かも知れませんが)。ともかく傾けて設置しておけば何の問題もなく使えますので、少々納まりが悪いですが写真のように傾けて設置してあります。

     この奇妙な現象をビデオに撮影しました。
    Video 1(mpg 1分8秒)水平設置の場合の様子です。MDの認識を約1分近く行いますが、認識できずにイジェクトします。
    Video 2(mpg 26秒)斜めに設置した場合の様子です。約5秒でMDを認識します。その後の再生も順調です。

     傾き現象の調査中のことです。調査に夢中になると電源が入ったまま分解や仮組みをやってしまう悪い癖がありよく失敗します。今回も、パチっという音とともにディスプレィの表示が消えてしまいました。基板上のどこかから焼けた臭いが漂ってきます。良く調べて見ると蛍光表示器(ディスプレィ)へ電源供給している-30Vの安定化電源付近から臭いがしており、そこのトランジスタが熱くなっています。取り外して調べて見ると、コレクタ、ベース、エミッタの各端子間がショートしてしまってます。蛍光表示器側の基板のどこかがケースと接触し過電流により電源回路のトランジスタが破壊したものと思われます。

     破壊したトランジスタは2SA954でしたが手持ちに無く、手元にあった2SA467に交換してみました。結果は、少しは表示するようになりましたが明るくありません。良く見ないと暗くて判らない状態です。電圧を測定してみると、-30Vのところが-11Vしか出ていません。安定化電源の基準電圧となるツェナーダイオード(16VのZDを直列にして32Vの基準電圧を構成している)も壊れているようです。ツェナーダイオードの手持ちは全然なく、ここは回路変更で対処することにします。

     蛍光表示器への供給電圧が数ボルト程度変動したとしても、その輝度に対してそれほどの影響は無いと思われます。また-30Vは、-7Vの安定化電源の入力電源にもなっていますが、-7Vは安定化されていますのでこちらへの影響も考えられません。つまり-30Vの安定化はそれほど必要な事では無いということです。となれば、2SA467のベースに-30V程度の電圧を印加してやれば良い訳ですから、ZDの部分に10KΩの抵抗を接続して、-46V × 10K / 14.7K = -31.3V をベースに印加します。これでエミッタには、Vbe(0.6Vと仮定)を差し引いた-30.7Vが出力されることになります。

     この考えに基いて変更した電源回路は下図のとおりです。これで、ディスプレィの表示は元の明るさに戻りました。