DENON MD/CDミニコンポ D-MS3の修理(その3) 2008.8.17

     なぜかDENONの「D-MS3」に縁があるようで、またまたジャンク品をオークションで入手してしまった。

     「ボリュームつまみを早く廻すと音量が上がらない」というふれ込みであったが、コンポが自宅に届き動作確認を行って見るとそれ以外にも何点か不具合が見つかった。

       1) ボリュームつまみを右に早く廻すと音量が上がらない。逆に急に下がってしまう。
       2) 電源オン後、一度大きな音を出さないとスピーカーから音が出ない。
       3) 「SET」、「TUNING(DOWN)」、「TITLE/CHARA」、「EDIT」のボタンが全く反応しない。
         「FM/AM」ボタンでトーン調整の表示が出ることがある。
       4) リモコンにまったく反応しない。

     MD/CD、チューナー、USB、OPT-INなどは正常に機能している。不具合事象は、操作スィッチに集中している。経年劣化による不具合ばかりだ。

     1点目のボリュームの不具合は、ボリュームの中の接点が汚れてきているのだろう。以前に修理した「DRA-F101」などと同じ症状だ。
     2点目の小音量時にスピーカーの音が出ないのは、スピーカーリレーの接点の汚れだ。
     3点目のボタンの認識不良は、ボタンに使われているタクトスィッチの接点不良だろう。
     最後に、リモコンに反応しないのは、リモコンの赤外線を検出する赤外線受信モジュールの不良だと思われる。まさかメインマイコンの不良ではあるまい。

     ケースカバーを開けてみる。比較的綺麗だ。不具合箇所は、スピーカーリレーを除き、全て操作パネルに集中している。まずは、操作パネルを取り外し、パネル部分の不具合修理に取り掛かる。

    ケースカバーを外す。中は比較的綺麗だ 操作パネルを取り外す 操作パネルの基板裏側 パネルの基板表側。リモコン受信モジュールは左側中央にある

     ボリュームを分解し、接点周りを清掃する。タクトスィッチについては、細筆を使って接点復活剤(イソプロピルアルコール)をボタンの隙間から流し込み、復活材が蒸発するまでの間、グリグリして接点の汚れを落とした。念の為に、パネル上の全てのタクトスィッチについて行っておいた。

     次に、リモコンの受信モジュールを調べる。モジュールの「電源」、「GND」、「信号出力」の各ピンに錆びが見られ、樹脂モールドにも金属性の錆びが付着している。良く観察すると、「GND」ピンと「信号出力」ピンが、この錆びで短絡状態になっている。これが、原因でリモコンに反応しなかったのだろう。樹脂モールドに付着している錆びを、カッタナイフで削り落としてみた。

    このボリュームが不良 分解して接点とその接触部分を清掃する 受信モジュールのモールド部分に錆びが付着 修理後の動作確認の様子

     以上で操作パネル部分の不具合箇所は修理できたはず。パネルを取り付けて動作確認を行って見る。ボリュームをつまみを早く廻しても確実に反応する。タクトスィッチについても問題は無くなった。リモコンのボタンを押すと、きちんと反応する。

     次にスピーカーリレーの修理に取り掛かる。バックパネルを取り外す。スピーカーリレーは、バックパネルを取り外しただけでアクセス出来そうだ。リレーをアンプ基板から取り外し、接点を清掃する。リレーを取り付けなおして、動作確認を行って見る。音量が小さい状態であっても問題なく音が出る。

    バックパネルを取り外す なんとかリレーにアクセス出来そうだ スピーカー端子のすぐ近くにリレーがある
    リレーを基板から取り外した リレーカバーを開けて接点を清掃する 基板に取り付け戻す

     以上で、不具合箇所は全て修理完了。なお、本来であれば、ボリュームやタクトスィッチ、リモコン受信モジュールを新品と交換するのが正しい修理方法だが、なかなか個人の趣味の範疇では、交換部品を手に入れるのが困難だ。

     デノンのサービスに申し込んでも、応対する担当者によっては、頑として「個人には部品を売れない」と受け付けてくれない。自己責任でされる分については、問題無い、と気軽に受け付けてくれる担当者もいるのだが。

     さて、一通りの修理は完了したので、機能確認の動作試験を行って見た。MDの再生、CDの再生は問題無し。CDからMDへの録音を試してみた所、見た目の録音動作は全然問題ないのだが、録音後に再生を行って見ると全く再生が進まない。ディスプレーの演奏時間表示が0で止まったままだ。

     一度イジェクトして、再度読み込みを行って見ると、「BLANK DISK」と表示する。何度か試してみた所、録音操作を行うと全て結果は「BLANK DISK」になってしまう。まるでMD消去装置のような振る舞いだ。

     録音操作後MDディスクは相当に熱くなっている。再生は良好だし、録音時にこれだけ熱くなるのだから、レーザー発光には問題なさそうだ。この様子では、録音用の磁気ヘッドが不良かも知れない。仕方無くMDユニットを分解して見ることにする。

    前面の操作パネルを外す 一度台座毎外さないとMDユニットは外せない 台座からMDユニットを外す

     「D-MS3」を何台か修理して来たが、修理する度に構造設計のまずさを痛感する。MDユニットを外そうとすると一旦台座毎外す必要がある。というのも、台座金具の裏側からMDユニットがビス止めしてあるからだ。

     「D-MS3」に使われているMDユニットは、分解が簡単だ。ユニットカバーを外し、現れた内部ユニットの奥側の丸いビスを2本緩めると、上部機構を簡単に外すことが出来る。たったこれだけで、ピックアップの交換やレンズの清掃が容易に行える状態となる。

     ピックアップレンズは綺麗であったが若干の埃がかぶっていた。念のためにレンズの清掃を行っておく。磁気ヘッドのコイルが断線しているかも知れないと思い、テスターで導通を確認してみたが、テスターの表示は、数Ωの値を示した。特に問題無いようだ。ヘッド表面を軽く埃を拭う程度に清掃しておく。

    MDユニットのカバーを外した MDユニットの上部機構を外す ピックアップと磁気ヘッドを清掃する ユニットのカバーを外した状態で動作確認を行う

     一度、組み立て直して動作確認を行って見る。MDユニットのカバーを外したままでヘッドの動きを確認する。録音時の磁気ヘッドの動きは問題なさそうだ。

     元に戻しケースカバーも取り付け、再度の録音確認を行って見る。CD一枚を録音した所、最初の数曲において、一部録音不安定な箇所が何箇所か見つかった。再度の録音テストを繰り返し、エージングを重ねると録音不良は起こらなくなった。

     特にどこかが悪くて修理した訳ではないが、分解・清掃、エージングにより正常に録音出来るようになった。使わずにいると駄目になるということかも。