PIONEER カセットデッキ CT-405の修理 2014.12.5


    ■ジャンクの「CT-405」

    イジェクト出来ないジャンクのCT-405

     ハードオフで、800円で売られているパイオニアのカセットデッキ「CT-405」を見つけました。先日修理したTRIOのカセットデッキ「KX-4000」の交換用ヘッドやVUメーターの部品取り機として活用できるのではないかと思い購入しました。

     「イジェクト出来ないのでノーチェックです」との商品説明がありました。確かにイジェクトレバーを押し下げてもカセット蓋が完全に開きません。途中からレバーも下がりません。デッキメカに不具合があるようです。

     CT-405は、発売が1979年ですから既に35年を経過しています。多分ゴムベルトも朽ちてしまっているものと思われます。

     このデッキの詳細は、「オーディオの足跡」に詳しい解説があります。曲の頭だし機能や留守録スタンバイ機能がついています。メタルには非対応ですがドルビーNRは搭載しています。


    ■分解・清掃・修理

     部品取り目的で購入したので修理をする必要はありませんが、一応動くところまでは修理を楽しんでみたいと思い、まずは動作確認を行ってみました。

     古い機種だけに中を見ずに通電するのは危険ですが、ハードオフで一度は通電テストをしていると思われますので電源を入れてみました。

     デッキメカの照明やVUメーターの照明は点灯しました。イジェクト出来ないのでこれ以上は何もできません。上カバーを外して中身のチェックを行ってみました。


    イジェクト出来ない動作未確認のジャンクCT-405。レバーやボタンは汚れています。 バックパネルはLINE-OUT/LINE-INのみ。DIN端子はありません。 通電可能です。メーターやデッキ部分の照明が点灯しました。


    上カバーを開けて見ました。デッキメカとメイン基板のみです。
    正面のメーター部分です。
    背面側です。縦の基板2枚はドルビー回路のようです。


    ・ゴムベルト

     デッキメカですが、案の定メインベルトは朽ちて切れ落ちていました。このベルトは取扱いに注意が必要です。うっかり手で触ろうものなら大変です。ベルトはクチャッと潰れてベトベトになります。破片を床に落として踏みつけたりしたら後が大変です。ベルトの破片を慎重にピンセットで拾い上げました。

     メインベルトを何とかしないことには、これ以上の動作確認はできません。まずはベルトの交換です。モーターとキャプスタンホィールに接していたベルトの部分は固着してしまっています。

     デッキメカをシャーシーから取り外し、メカからモーターとホィールを取り外し固着したベルトをシンナーを使って拭き取りました。その後、適当なベルトを取り付けてみました。

     その他のベルトについては、メインベルトとは成分が異なるためと思われますがまだまだ健在でしたのでアルコールで清掃だけしておきました。また巻き取り機構のプーリーのゴムパーツなども分解は面倒なので綿棒を使って清掃をしました。


    デッキメカです。配線はコネクタではなくラッピングです。配線を外すと後がやっかいです。 デッキメカには、メインベルトの他にカウンターベルト、プリーベルト3本の計5本のベルトが使われてました。 メインベルトは朽ちて切れ落ちています。他のベルトは健在のようです。


    メインベルトの破片です。これをうっかり手で触ろうものならエライ目にあいます。 下カバーを外してみました。特筆すべき事はないですね。 ラッピングを外すと後が大変なのでケーブルを繋いだままデッキメカを取り外しました。


    テープ巻取り機構です。3つのプーリーで早送り、巻き戻しをしています。ゴムがへたって空回りしてます。 ホイールやモーターに固着したベルトを清掃するために、デッキメカの裏からホィールやモーターを取り外しました。 メインベルトは、手持ちのジャンク品の中から適当なベルトを見つけて付けてみました。


    ・イジェクトの不具合

     購入時点で不具合があったイジェクト不良ですが、こちらはデッキメカをシャーシーから取り外した時に直ってしまいました。何かが、どこかで引っ掛っていたのかも知れません。

     実は、このイジェクトの不具合は、修理完了後に再現させることが出来ました。勿論原因もはっきりしました。


    ・右側録音再生不良

     デッキメカが動くようになりましたので録音済みのテープを使って再生確認を行ってみました。すると右側からはブーンというハムノイズが聞こえるだけです。左側からは音がでています。

     再生アンプの不良なのかヘッド不良なのか、続いて録音を行い再生してみました。やはり右側から音が出ません。このテープを別のデッキで再生してみると右側が録音出来ていません。

     録音・再生ともに右側出力不良です。そこでヘッドの導通確認をしてみた所、右側が断線しています。ヘッド内部のピックアップコイルの断線です。ヘッドの部品取りとして購入したのに残念なことにヘッドが不良とは。

     手持ちのジャンク箱の中を探してみましたら、部品取りしたYAMAHAのカセットデッキ「KX-5500」のヘッドが見つかりました。取り付け穴もサイズもぴったりです。

     見つけたYAMAHAのヘッドと交換してみましたところ、再生・録音ともにうまく動作するようになりました。


    YAMAHAのカセットデッキ「K-5500」から取り外したヘッドに交換しました。 取り外したヘッドです。右側のピックアップコイルが断線していました。


    ・清 掃

     このまま使うにしろ部品取りするにしろ、手元に置いておく限りは綺麗な状態にしておきたいものです。手垢が経年でこびり付いた操作レバーやツマミは、細番手のサンドペーパーでピカピカになるまで研磨しました。 


    デッキメカのレバーは、細番手のサンドペーパーで研磨しました。パネルの文字がレバーに写り込んでいます。
    こちらのボタンも同様に研磨しました。


    ■修理後の動作確認と試聴

    修理完了のCT-405です。部品取りとして暫く保存することにします。

     デッキメカについては、全てうまく動作するようになりましたが、トルクが要る長時間テープの巻き取りや早送りでは空回りしてしまいます。やはり本格的なメンテナンスが必要です。

     別のデッキで録音済みの正常なテープを連続再生させたところ、時折音が一瞬途切れたりプチッというノイズが混じったりします。回路部品の劣化があるのかも知れません。

     部品取りとして購入したデッキです。これ以上の調査・修理は行わずに部品活用の日までこのまま保存しておくことにしました。

     イジェクトの不具合ですが、次のような操作を行うと起こります。

     「TIMER START」と「PLAY」の操作レバーを同時に押し下げて、タイマー再生スタンバイの状態にします。ここで電源スィッチを入れると「TIMER START」のレバーが元に戻り、再生が始まりますが、電源スィッチを入れる前に、タイマー操作の解除のために「STOP」レバーを押すと、「PLAY」のレバーは元に戻りますが、「TIMER START」のレバーは下がったままです。

     この時、手動で「TIMER START」のレバーは元に戻そうとしてもロックされていて完全には戻りません。また、この時にはイジェクトレバーの操作が出来ません。一旦電源を入れてやると「TIMER START」のレバーが元に戻り、その後はイジェクトが可能となります。