数年前に一度アナログシンセサイザー作りに挑戦しましたが、アナログシンセサイザーの製作は結構大変なので代わりにマイコンを使ったMIDI音源用のシンセサイザーを作りました。 製作したシンセは、ポリフォニックで和音が発音できて良かったのですが、流石にマイコン1個では多彩な音色を作るのは無理でした。 そこで、今回もう一度アナログシンセサイザーの製作に挑戦してみることにしました。 アナログシンセサイザーについてはその回路図や製作例がネットにたくさんアップされています。それらを参考に適当に組み合わせて見ました所それなりのものが完成しましたので公開します。 回路は秋月のB型ユニバーサル基板で製作しました。スィッチパネルやボックスは段ボール紙の張りぼての試作品ですが音はそれなりに良い音が出ています。
(2021.9.28)木材を使ってケースを作り直しました。
2.回路構成 一口にアナログシンセといっても回路構成は様々です。KORGのMS-20などを参考に次のような構成としました。
VCOx2,
VCF(LPF)x1,
VCAx1,
LFOx1,
EGx2(AR+ADSR),
S/H,
MIDI-KEY(GATE,CV) 3.回路概要 3−1.VCO
シンセサイザー発音の要となる回路です。CoolAudioのVCO専用IC「V3340」を使いました。V3340のデータシートに記載のレファレンス回路をそのまま採用しました。 ICの出力は、三角波、鋸歯状波、パルス波です。ソフトシンクやハードシンクは使っていません。VCO1のパルス波については、MS-20を真似てボリュームでパルス幅を変更出来るようにしました。 VCO1とVCO2共通のCV入力には、キーボード入力(V/OCT)と汎用入力(LFOとS/Hの切替)を設けました。更にスケール変更(オクターブ切替)用のCV回路を付加しました。 VCO2には、VCO1とのピッチを合わせるためのボリュームによるCV回路を付けました。 VCO基板には、VCO1とVCO2の出力を合成するためのミキサー回路とホワイトノイズ発生回路を搭載しました。 ホワイトノイズ発生回路はネットで見つけた2石の簡単な回路です。使ったジャンクのトランジスタでもピーク+/-0.8Vと結構大きな出力レベルが得られています。オペアンプを通して+/-8Vの出力にしています。
MS-20などでは、HPFとLPFの2つのフィルターが使われていますが、HPFは省略しLPFのみとしました。 回路は、ネット上で見つけたダイオードによる回路を参考にしました。信号の入力ポイントを変更するだけでHPFにもLPFにもなる回路です。2つ作ればHPFも実現できます。 VCFのCV入力は、3入力としました。EG2(ADSR)出力、キーボード出力、LFO出力の3つです。LFOは、三角波とパルス波をパネルスィッチ側で選択出来るようにしました。 製作したVCFではレゾナンス(ピーク)を深くすると容易に自己発振します。カットオフとキーボード出力を適当に調整してやると自己発振のみで音階を奏でることが出来ました。 VCF基板には、空きエリアにRM(リングモジュレータ)回路とS/H(サンプル・ホールド)回路を組み込みました。 RM回路は、VCO1のパルス出力を搬送波、VCO2のパルス出力を変調波としています。出力はVCO2の波形セレクタに接続しています。VCO1のパルス幅、VCO2のピッチ、VCO1,2のスケールを変更して音色を変化します。 S/H回路は、ホワイトノイズをLFOのパルスでサンプルしています。出力信号は、振幅が+/-8Vまでランダムに変化するパルス波となります。周波数はLFOに同じです。 VCO入力のLFO.S/HをS/Hに切り替えるとピコパコ,ピポパポのような面白いサウンドを発生します。
3−3.LFO,EG1(AR),EG2(ADSR)
LFOの出力は三角波とパルス波の2つだけです。正弦波を出力するものもあるようですが、正弦波は三角波で代用できますので無くてもいいと判断しました。 LFO回路は定番の積分回路とコンパレータ回路で構成しています。コンデンサの充電用・放電用の抵抗を可変にすることで波形の形が変更出来るようにしました。これはMS-20の仕様に合わせたものです。 EG(エンベロープジェネレータ)は、2回路設けました。EG1は、AR(アタックとリリース)のみです。EG2はADSR(アタック・ディケイ・サスティーン・リリース)です。 EG1については、ゲート入力をパネルスィッチにてキーボード出力とLFOのパルス出力との切り替えが出来るようにしました。LFOのパルスをゲート入力とすることによってキーボードを押さなくても発音させることが出来るようになります。 EG1とEG2の出力は、パネルスィッチにていずれか一方がVCAのCV入力となるようにしました。
3−4.MIDI−KEY(GATE,CV),VCA
シンセサイザー用のキーボードには、USB接続のMIDIキーボードを使うことにしました。そのためPICマイコンにてUSB-MIDI-HOST機能を作成しました。 マイコンは、ノートオン信号を受信するとそのノート番号に対応する電圧をPWMにて出力すると同時にキーが押されたことを示すゲート信号を出力します。 出力電圧は、V/OCTとなるようにレベル変換(増幅)しポルタメント回路を通した後、MASTER調整用電圧と合成し、KEY-CVとしてVCOとVCFに接続しています。 ポルタメント回路は、簡単なCRによる充放電回路で構成しました。 マイコン回路用の電源+5Vと+3.3Vは、DC-DCコンバータ(M78AR05)で+15Vから+5Vを生成し、3端子レギュレータ(LP2950L)で+3.3Vを作成しました。 VCA回路はネットで見つけたトランジスタによる差動増幅回路です。VCAのオーディオ入力とCV入力はともに2入力対応としましたが一つしか使っていません。 VCAのオーディオ入力には、VCFのオーディオ出力を接続しています。CV入力は、EG1またはEG2の切替出力となります。 PICマイコンをUSB-MIDIの処理だけにしておくのは勿体ないので、デジタルエコーの機能をマイコンに組み込んでみました。VCAのオーディオ出力をマイコンでA/D変換して内部のエコー回路を通した後、PWMで再出力します。 エコー時間(0-250ms)、エコーのレベル(0-100%)はボリュームで可変できるようにしました。ボリュームの値はマイコンでA/D変換により取り込んで処理します。 シンセサイザーの最終出力は、VCA出力とエコー出力の切替としました。 PICマイコンは、PIC32MX230F064Bを使いました。ファームウエアのソースコードはこちら(main.c)です。 3−5.電源・ケース
シンセサイザー全体の電源は+15Vと-15Vの2電源としました。0.5A容量の電源トランスの2次側+/-15Vをダイオードで整流し3端子レギュレータで作成しています。特に説明を要するような回路ではありません。 ケースは木材を使ってきちんと作るべきですが、MS-20のようなパッチング機能を付け足すなどするとパネル上のスィッチの位置や全体の大きさは今の状態から大きく変わります。 ケース全体の寸法はまだ固定したく無く、さりとて基板や配線剥き出しのままでは始末も悪いので段ボール紙で仮のケースを作成した次第です。
(2021.9.28)木材を使ってケースを作り直しました。
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